阿曽原温泉小屋

k

知らないってことは!Ⅲ(本物の轟音!)

2020-05-27

写真

「三の窓雪渓」てっぺんのコルが三の窓!裏側が「池ノ谷」左又になります。

続き。 

我々は、「池ノ谷ゴルジュ」上流にヘリで運んでもらって現場に向かうことになりました。

へりから降り立ったところは広い河原でしたが、「ゴルジュ」の入り口に近づくと両岸の急斜面が迫って来て、狭く暗い谷筋はツルツルに磨かれた岩の割れ目を勢いよく水が流れています。

地形図の中心が、ヘリで降りたポイント!下流のゴルジュの険しさが分かるはず)

少し下流では、水流が一旦空中に膨らむように見えているのですが・・・その先は滝となって落下している様子で、激しい水流は空気を震わせて轟音を轟ろかせ・・・隊員間の声は届かず大声で呼んでは身振り手振りで合図を送りあいます。

危なーい!!! 

右岸を先行して滝の落ち口を観察していたK先輩の、直上の岩盤斜面にかろうじて張り付いていた?乗っていた?ビールケースを潰したほどの岩がズルズルとユックリと岩盤斜面を滑り出して、このままではK先輩に直撃してしまいます。

みんなで大声を出しますが、水の音が激しくて声が届きません。

一瞬K先輩が振り返って、我々が血相を変えて上の岩盤斜面を指さしているのを見て???異変を感じたのか、振り返りもせずに斜面から離れるように一歩飛んだ直後にビールケースは直前までK先輩が立っていた場所に落下して来て、岩棚でバウンドするように滑りながら滝の落ち口からゴルジュの中に吸い込まれていったのでした。

つづく。

※三の窓雪渓は「氷河」!

写真は、紅葉しているから分かる通り秋なのですが、それなりに雪渓が残っています。

なにかと何時もお世話になっている、雪氷額の権威「飯田肇先生」達の調査で、この三の窓雪渓が「氷河」であると認定されました。(最下層の氷は、数百年前のものとのことです)

極東ではカムチャッカに残る程度との通説を、「ひっくり返した」のですから、なんでも「常識」にとらわれずですよね!

 

予行演習?

2020-05-26

写真

コゴミ・カブ・キュウリ・ニンジンを刻んで。

外に出れないし家で飲んでますが、阿曽原小屋で作っている 「あなんたん霊水入り醤油」 で野菜を漬けてサラダ感覚?で食べてます。 

写真は、コゴミの先っぽを和え物にして残りの茎を野菜に足して漬けてみました。塩が強い時は野菜を足して、薄い時には塩昆布混ぜて・・・家飲みのツマミ作りは私の仕事です。

そんなことより、早く小屋でお客さんに食事を出してあげて、喜んでもらえる日々が来てくれると良いのですが・・・。(予行演習?調理訓練?みたいに、三日に一度は漬けています)

※圧巻です!!!(騙されたと思って、見てみられ)

先日「クリス・ボッティ2008」ライブでの「スティング」を紹介しましたが、同ライブで是非とも見てもらいたいのが

ジャズドラマー「ビリー・キルソン」のソロプレイ  汗だくで見せる魅せる「スゲーッ!」って何回見ても思うし、最後にライブに参加したアーティスト「ヨーヨー・マ」「スティーヴン・タイラー」等など全員が揃って・・・どんだけ豪華なん!って思わされますから。

知らないってことは!Ⅱ

2020-05-26

写真

裏劔!(実際に見ると大迫力なのです)

続き。

翌早朝、県警ヘリ「つるぎ」が剣沢警備派出所前のキャンプ場トイレの屋根に着陸して、まずは先輩隊員が乗り込み下山ルートを上空からトレースするために捜索に向かいます。

「つるぎ」が出発してから30分位して、警察本部と「つるぎ」が通話している様な???剱岳を挟んだ「池ノ谷」上空から剣沢まで遭難対策無線の電波が届きません。

派出所の連絡要員隊員から、本部からの電話連絡で「池ノ谷」ゴルジュの中でパーティー発見!との一報が入ります。

どうして、そんなところに下れたのか??? 

ゴルジュ入り口の大滝下流と、その下流にある次の滝までの間の谷底にテントを張っているとのことです。

「池ノ谷」 は別名「いけぬ谷」と呼ばれて、特に下部のゴルジュ帯は大雪の年の春山シーズンに雪で埋まっている時以外は通過は無理! 滝が連続・両岸岩壁の急峻さ・水量の多さ・水勢の強さ・流路の狭さ等々、梅雨明けに下流からアプローチしたことが有りましたが・・・とても奥に進もうとは?進めるとは思えませんでした。

(雪で埋まっている時期ても、常に雪崩・ブロック雪崩の危険があるので、ヨイ子の皆さんは春でも行ってはいけません!地形図見ると、岩壁マークだらけでしょ)

救助方針は、隊員全員をゴルジュ上流の広い「池ノ谷」にヘリで空輸して、ゴルジュ左岸側壁をトラバースして遭難者の真上辺りの若干優しい藪斜面を谷底まで下降して合流後、側壁に登り返して上流に向かうことになりました。

続く。

※仙人池からの裏劔!

左端から右に伸びる 「八ツ峰」 (以下、説明しだすとキリが無いので、左側からコルの紹介を中心に)

写真中央に深く切れ込んでいるのが「5峰・6峰のコル」(下るルンゼに雪が詰まっている)

最高峰(長次郎の頭・チンネ等)左側の小さななコルが「7峰・8峰のコル」

右側残雪が前面に張り付いた、大きなコルが三の窓!(裏側に下る谷が「池ノ谷」)

三の窓コル、右隣が「小窓ノ王」 右端が「小窓ノ頭」と小窓尾根が馬場島に下ります。

知らないってことは!

2020-05-25

写真

馬場島から見た、右奥影の中が「池ノ谷」、四角いピーク(マッチ箱ピーク)から中央に下るのが「小窓尾根」

夏山シーズンお盆辺りだったと思いますが、某大学山岳部パーティー(4・5人?)が剣沢キャンプ場での定着合宿から戻らず連絡もつかないと捜索要請が入りました。

若く元気なパーティーだし、まとめて全員が転落等遭難しているとは考え辛いし・・・剱岳周辺は、まだまだ登山者が色んなコースで行動しており、一般登山道・バリエーションルート共に事故やアクシデントが発生すれば連絡が入るはずです。

予定では、三の窓~ 池ノ谷~小窓尾根1,614m ~馬場島への下山ルートですが、夏の終わりは池ノ谷の雪渓が下部では消えていて激流となっているはずで、ゴルジュ帯入り口まで間違って下っても見れば進めないのが分かるはずだし、地形図 を見れば険しい谷になっているか一目瞭然!嫌でも右岸の小窓尾根に取り付くはずです。(下の廊下みたいに広くはなく、狭く・暗く・濡れているイメージ!)

それとも、誰も行動しない時間帯に大きなクレパス・シュルンドにまとめて転落したか?様々なシュミレーションをしてみるが???

私はN隊員や先輩隊員と共に劒沢警備派出所勤務をしていたのですが、翌早朝から県警ヘリコプター(初代つるぎ:ベル社製206ロングレンジャーだったから、かなり若かったはずです)に先輩隊員が乗り込んで剱岳周辺を空から捜索して、私とN隊員らペーペーの陸上要員は一般登山道ではないエリアに空輸されて、2・3日間ほど長次郎雪渓・北方稜線雪渓の縁のシュルンドを覗きに行かされる計画だったかと。

私達は翌日からの捜索に備えて、テント・コンロ・登樊装備・食料等などを準備して明日からの捜索に備えたのでした。

続く。

※参考

写真中央手前が早月尾根の松尾平、小窓尾根は奥の雪が積もって右奥ギザギザに伸びてます。

文中の「池ノ谷~小窓尾根1,614m」をクリックすると地形図が見れるので参考にしてください。

当たり前の風景!

2020-05-24

写真

「ニギス」のすり身、色は悪いけど欠かせない食材です。

「キス」に似ているから「ニギス」!目が大きくなるから「メギス」! 富山では「ミギス」と呼ぶことも。

生でもスーパーや魚屋さんに並びますが、写真の通り「すり身」にして「味噌汁」「鍋」「おでん」にして食べますが、富山の居酒屋では「すり身揚げ」として、そのまま揚げる・ネギなど野菜を足して捏ねてから揚げる等、お酒の「おつまみ」としてよく食べられてます。

地元の海産物会社・鮮魚店の手作り品等、いろんな種類の「すり身」が作られていて値段も食感も様々です。(基本安いのですが、鱗や小骨がほぼまんまの粗挽きなのとか、混ぜ物で延ばしたの?みたいのとか)

阿曽原小屋でも、冷凍にしておいたものを味噌汁にして時々食べてもらっています。(私的に、ネギとの相性が最高だと思うのですが)

ニギスは「干物」としても良く食べるのですが、けっこう脂が乗っていて焼き網が炎上することもあるほどです。(上物でオキアミを、お腹一杯食べているのに当たるとラッキー感が)

毎年のお歳暮には、「自分がもらって嬉しいから」黒部市生地の干物屋さんからニギス等いろんな干物を送ってもらっています。(各家庭では、キッチンが一時下品な煙が立ち込めているはずですが・・・)

コロナウイルス騒ぎが治まったら、富山に美味しいモノを食べに来てください!

やっぱり神様の掌の上?Ⅻ(山仕事の予行演習?)

2020-05-24

写真

雲海に浮かぶ白馬方面!(左端雲の下辺りが阿曽原)

目出度く帰還できた三人でしたが、道のない藪山に地形図だけを頼りに「勢い」だけで向かってみて黒部の濃さを思い知らさて・・・将来廻ってくる山仕事の勉強になったのでした。

○標高・地形・斜面の向き等で、植生が変わって藪漕ぎの困難さが全然違ってくること。(山菜取りに通えば解ってきますが、最短距離に惑わされない様に)

○藪漕ぎは出来ても、刈り込んでしまうと登山ルートとしては利用出来ない斜面が黒部では殆ど。(藪漕ぎばかりしていると、普通の登山道歩きの感覚が無くなって)

○山懐が深い山域で、熊の餌になる植物も多く冬眠時の寝床になる巨木が多い等の理由からか?ハンパなく熊の気配が濃いエリアでした。(爪痕・食痕・足跡に気を配る様に)

○地形図を読んで、ゴルジュ帯が待ち構えているのに下降して怖い目に遭ってしまった。(ちゃんと資料を信じて、自分の都合のいいように解釈しないこと)

○季節を読まずに行動したので、水量・水温・水勢の厳しさに真剣にビビりました。(秋口になれば水量が減って来るのですが、オマケに砂防堰堤が有って・・・言い訳するんじゃない!)

でもこの経験が?いろんなことに目を向ける事を覚えて、「中背尾根」の伐開、仙人谷登山道の迂回ルート作り、「雲切新道」の伐開等、この先の山仕事に生かされてゆくのでした。(痛い目に遭わないと分からん奴らですが、見方を変えればシブトイのかも)

行方不明者の捜索や発見救助活動をしてきた経験から、「山で迷うと谷に下る」傾向が有るのは知っていましたし、特に黒部エリアでは下れば下るだけ滝・断崖が出て来て進退窮まり、その頃には消耗しきって登り返す気力も無くなり・・・。

山を下りようとするのは道迷いの行動パターンですが、それを解っていながら「近道」「簡単そう」等の誘惑に負けて、自分を過信して突っ込んで「縮み上がって???」しまったのです。

皆さんも「自分は藪漕ぎをしないから」って思わずに、去年の8月17日に書きましたが道から外れて 行方不明 になる遭難が時々あるという事は、自分も一般登山道からルート外に迷い込んでしまう事が無いとは限らないし、そういった事態に陥ってしまったら思い込みで下り過ぎないことを肝に銘じておいていただければと。

次回は、N隊員とのあり得ない行方不明パーティー捜索の話を書けたらと思います。

アーカイブ

最近の記事