阿曽原温泉小屋

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奇跡!

2025-11-18

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前ページ写真の裏側、左より劔本峰~八峰~三の窓~小窓ノ王~マッチ箱ピーク

古い話ですが、私が隊員になる前年の昭和54年年末に早月尾根2,800m上部「シシ頭」付近で池の谷右俣へ二名が転落する事故が発生してしまいました。

厳冬期で池ノ谷へ下降して捜索することは、あまりにも危険が大き過ぎて諦めて翌春以降の捜索で見つけてあげることにしたものと考えます。

私が隊員になって上市警察署勤務していた初夏だったと思いますが、白萩川の池ノ谷合流点から上流の川の中で人間の片足が沢の中に有るとの通報で収容に出動した事があります。

冷たい沢の流れの中で、血の気が失せて真っ白になった片足が付け根から水に洗われていました。

長さ・太さ・足のサイズ等から、それなりに立派な体格の男性ではなかろうかと想像出来ました。

付近を捜索しても胴体などは見つからず、取り合えず膝で折り曲げて大きなビニール袋に入れて背負い子に固定して担いで白萩川を下って帰署しました。

後日、その御遺体は年末に早月尾根から転落した方の一人で有ることが判明したのですが・・・

転落したのは池ノ谷なのに、小窓尾根を越えた白萩川で発見されるとは!

続く

池ノ谷・・・「行けぬ谷」とも言われて

2025-11-17

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正面が剱岳早月尾根!左側に伸びる北方稜線~三の窓~小窓尾根(小窓ノ王・マッチ箱ピーク)

昨日残念なニュースが・・・

剱岳早月尾根を、下山中の登山者の姿が見えなくなったと同行登山者からの通報で消防防災ヘリ「とやま」が捜索したところ「池ノ谷右俣」標高2,060mで女性の遺体を発見したとのことです。

ニュース記事

事故発生は早月尾根を下降中とのことですが、誰も目撃していないため滑落地点はハッキリしませんが遺体発見場所から推察すると標高2,800m以上の岩尾根から800m前後は転落してしまったのではなかろうか・・

現役時代の訓練と遭難者の捜索で、真冬以外は何度も馬場島から右俣に入ったこともありますし、一度だけ真冬の転落事故の際には捜索の為に早月尾根2,600m上部から右俣へザイルを伸ばして数ピッチ下降したこともありますが・・・転落してしまえば、ホボホボ助かる見込みのない急峻な谷です。

剱岳は既に冠雪しており、先行の同行者のトレースが残っていたとしても、足場の雪が崩れる・氷と雪と岩のミックスした岩稜は足場が悪い等々危険な状態だったのでは?

今日の夕方から強い寒気が入る予報で、山では相当な積雪が予想されているので、池ノ谷は雪崩の巣ですから雪渓と岩場の隙間にでも入り込んで発見することが出来ずに埋没したままになれば、来年の秋になるまで出て来なかったかもしれません。

捜索しようにも雪崩の危険があるので、谷底に入っての捜索は自殺行為! 

動いている等、生存が確認されれば話は別ですが・・(実際に3月に早月尾根を挟んだ反対の「東大谷中俣」に転落した大学生が生存していた時には「旧平蔵避難小屋」直下から隊員一名が下降して生存者と合流して救助した活動を四回に分けて書いたことがあります)

早月尾根の右俣転落事故では、1月に転落した遭難者が雪渓の中から発見されたのは9月に発見されたし、3月に転落した遭難者は6~7月に発見されています。

冬季間に次々と雪崩が発生してドンドン埋まってしまうので、早い時期に埋まってしまうと発見が遅れるのです。

残念な事故ではありますが、昨日のうちに見つけてあげることが出来ただけでも・・・

現場に出動された、消防防災ヘリコプター「とやま」のパイロットと現場に降下した隊員のチームの方々は、条件の悪い危険な右俣での活動ご苦労様でした。

昔の人は凄い!(冬枯れすると)

2025-11-15

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中央に水平歩道跡が見えます(阿曽原滝左側岩壁)

黒部峡谷の開拓期に、欅平~阿曽原~仙人谷ダム~十字峡~白竜峡~黒部ダムまで 水平歩道・旧日電歩道と道が作られました。

その時には欅平上部から上流に向けて水平に道が作られていたのですが、飛龍峡の仙人谷ダムを作ることに決まって欅平から建設用資材搬入トンネル(リンク地図茶色点線)のためと水路用トンネル(リンク地図青色点線)を掘るために、水平歩道からそれぞれの工事現場に高度を下げて現在の仙人谷ダムと阿曽原キャンプ場まで道が作られたようです。

仙人谷ダㇺへは人見合宿所裏の尾根から降りダム上流東谷出合吊橋を過ぎてからの急登、阿曽原は欅平側送電線鉄塔付近から降り阿曽原小屋前から急な登り返しになります。(リンク地図参照)

それぞれ山道を降りてから登り返して水平道に出るまでの区間は廃道になって使われなくなったのでした。

写真は、阿曽原谷左岸の雑木が冬枯れで葉っぱが落ちると現れる旧道跡ですが、小屋から見ると阿曽原谷の滝が見えるのですが、その左側の急斜面の岩盤に水平に削られた写真の痕跡が見える様になります。

ちなみに滝をはさんだ右側尾根に 送電線鉄塔 が建っていていますが、信じられないかも知れませんが昔は滝の前の空中に吊り橋が作られていた写真がトロッコ列車宇奈月駅二階の展示室で見ることが出来ます。(リンクページの写真を横断するように吊り橋が!)

昔の作業員は、凄い事して黒部に立ち向かっていたのです。

たまたま?偶然?お導き???

2025-11-13

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「志合谷」には、今シーズンも9月末まで残雪が

続き

そこで「誰が陳情書を作るのか?」って話になったのですが、私は当時「東京上野松坂屋」で開催されていた「夏山相談会」に毎年参加していて各山域関係者と繋がりがあったのと、この話に最初から関わっていた関係で・・・たまたま・偶然が重なって?なんとなく私が雛型を書いて全国の山域に配布して~各地の実情に合わせて訂正・添削してもらって其々環境省に提出することになりました。

陳情書なんて書いたことも無いし、色々調べて作ってみたのですが「なんかこんな感じのもの描いた覚えが???」って、この様式は警察学校時代にイロイロやらかしていた時に書かされていた「始末書」とほぼ同じでで「こんな時に役に立つとは!」私の意志とは関係ない所でズ~ッと前から決まっていた事?お導きなのか?(あの時やらかしたからこその?)

ちなみに阿曽原温泉小屋は、発電所から電気が供給されていて発電機も無いし軽油も使っておらず、関係ない?って言えば関係なかったのですが・・成り行きで一肌脱ぐことになったのでした。(他にもヘリコプター料金高騰の際にも陳情にも出向いたのですが・・阿曽原温泉小屋では基本へりコプター使わないのですが、なぜかたまたま・偶然が重なって?)

後日連絡が入り環境大臣が直接話を聞いてくださることになり、我々陳情団(十人程度だったか?)を大臣室に招いてもらい巨大な楕円形のテーブルで円卓会議的な感じで実情を話して来ました。(貴重な体験でした)

ちなみに大臣室へ案内~先導して下さった当時の本省自然公園課長は、元環境省長野事務所長だった方で雲切新道の計画が持ち上がった時に視察に来られた方で、黒部ダム上流の「平の小屋」~「黒部ダム」~「下ノ廊下」~「阿曽原」を一日で歩き通した強者でした。(これも縁?たまたま・偶然)

結局「免税」については、簡単には法整備が進められないとのことで「山小屋のトイレ整備」「登山道整備」等の補助を拡充する方向でって話になって、そのままになっていたのですが・・・

来年4月より、暫定税率廃止の方向で動き出しているみたいでなによりです。

「軽油引取税」の行方は・・・

2025-11-12

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奥鐘山西壁(右側の崩壊ってあったかな)

最近、国会でガソリン・軽油の免税が話し合われているようですが・・・

私の「霞が関」初見参は、成り行きでしたが環境大臣室への陳情でした。

山小屋の電気は、ほとんどディーゼル発電機で賄っています。(最近は太陽光等も導入されていますが、メインは未だにディーゼル発電です)

燃料の軽油には「軽油引取税」が上乗せされているのですが、当時は「道路特定財源」として道路の維持管理に使われる目的税でした。(2009年から一般財源)

ただし道路に関係のない業種の例えば「鉄道を走るディーゼル列車」「海上の漁船」「大規模農場のトラクター」「スキー場の圧雪車」等々の道路に関係ない業種の軽油引取税が免除とされていました。

当時の全国の主だった山域の山小屋の主人は、それぞれの県税事務所に「据え付けた発電機を運転するだけで道路に負荷をかけている訳でもないのに、税金を徴収されるのは不公平でないか」と掛け合っていたそうです。(大きな山小屋では軽油の消費量は相当なモノ)

しかし「法律で免税業種に指定されていないので、末端の県税事務所に申し立てられても・・・」って回答ばかりで

そこで財務省に直接陳情しても弱小「山小屋連」の話なんぞ取り合ってもらえないだろうから・・・

山小屋の実情を理解してくれている、環境省から財務省に話しつけてもらえないか?ってことで、全国の主だった山域の山小屋組合の代表が其々陳情書を提出することになったのでした。

続く・・・

※余談

話しは逸れますが、現在も山小屋の全国連合会的な組織はありませんが、日本全国各山域は「山容」「気候」「有人無人等小屋の営業形態」等々が大きく違うので全国組織的なモノは無理ではないかと個人的には考えています。

しかしコロナ禍の時に霞が関の省庁五ヶ所ほどへ、たまたま持ち回りで北アルプス代表組合長だったので成り行きで陳情に行きましたが、その時には「我々はヤッパリ小さな組織だわ!」って痛感してまいりました。

山に入るってことは!

2025-11-11

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キレイな紅葉してるけど、実がなってません

昨日 大町温泉郷 でクマが目撃されたニュースになっていましたが、地元の宇奈月温泉でも黒部川を挟んだ対岸斜面や下流の集落の公園での目撃が相次いでいます。

確かに山の中には「ブナの実」「ドングリ」等は極端に少ないのですが、他でも言われていますが「日本シカ」「イノシシ」が増えてしまった影響もあるのではないかと?

我々は今シーズンも、宇奈月~糸魚川~扇沢~黒部ダム経由で黒部峡谷に通って作業していましたが、糸魚川の148号を早朝5時過ぎの暗い国道で日本シカと衝突しそうになったり、別の日には扇沢手前10分の道路でトコトコ横断するイノシシに遭遇したり・・・

幸い黒部奥山では、野生生物からの人間への被害はいまのところ報告されていませんが、出たからと言って黒部峡谷は国立公園内なので無闇に野生生物を駆除することも出来ないだろうし・・・

山に入る!ってことが、今までの常識通りにはゆかなくなるのではないかと?

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