阿曽原温泉小屋

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高級リゾート誘致!(利用は大賛成ですが?)

2024-07-20

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9月末に真っ白になる事も(剣沢キャンプ場)

昨日午前、富山のローカルTV局の記者から「全国の国立公園に高級リゾートホテルを誘致する方針と総理から発表されるので意見を聴かせてほしい」って電話が入り取材を受けました。 参考「国立公園に高級リゾート・・・」

「高級リゾート」って言われても??? 

いわゆる「高級」とは縁のない生活をして来た私には、昨日の総理の話には具体的なことが触れられなかったし、いきなりマイクを向けられて?まとまりのない話しか出来ないし、立山・黒部を含む「中部山岳国立公園」しか知らない私ですが、おもうところ・考えることをザックリと補足してみます。

〇賛成だけど!

基本的には、海外の方々に日本の素晴らしい景観に触れていただき感動して頂けることは大賛成です。

毎GWに立山室堂で勤務して海外からの観光客に接していると、世界中の方々に喜んでいただけるものを持っている場所なのだと確信していますし、出来るだけ多くの方々に喜んでもらえればと思います。(それを見ていると、郷土愛?的なモノを感じてしまいます)

〇気象条件厳しいんだけど?

富山湾から直ぐ近くに立山がそびえて、大雪が降る・雲が湧く等など特殊な気象条件だということを理解してもらわねば遭難の元になるのでは?

世界中で、一冬で20mの吹き溜まりが出来て「雪の大谷」になりますが、その雪が一夏で全て溶けて無くなってしまう場所は立山くらいだそうです。(それだけ厳しいのに・・冬場は休業するの?)

〇ルール(登山文化)を理解してもらえるのか?

日本人は昔から「富士山」「白山」「立山」等々信仰の対象として大切にされて来たルール(文化)があるし、指定地でキャンプする等ルールが沢山あります。

海外では日本よりも厳しいルールのナショナルパークは沢山ありますが、現場で見ているといろいろな国の方々が来ておられて利用方法で混乱しているのを目にしています。(現に富士山登山が問題になってます)

〇同じエリア利用で摩擦が起きないか?

例えば、立山雷鳥沢キャンプ場では一泊一名1,000円の利用料金ですが、高級リゾートとなれば数十倍の料金になるのでは?ホテル外へ出て一般登山者と混ざって登山したりくつろぐ姿がイメージ出来ないのだけれど・・。

リゾート専用のプライベートエリア的なモノは作れそうにないし、そもそもシンボルとなる山頂は一つだし、登山者を区分けして登らせる訳にもゆかないし混乱が起きないか心配です。(交通機関も、富裕層向けにヘリコプター利用等工夫が必要かも)

〇環境保全・救助体制等が確立されて来たのは!

立山黒部エリアだけではありませんが、環境省・林野庁・国交省・県庁・警察・消防・厚生センター等々の各役所(細かな各種法令があります)の働きと、現場管理を担って来た「TKK」「黒部峡谷鉄道」「関西・北陸電力」「山小屋等宿泊施設」等関連業者とが協力しながら保全・体制作りに尽力してきた歴史があります。(だから会合が沢山あるのです)

これまで細かな各種法令(山奥にソグワナイモノも)に縛られて運営して来たところもあるのですが「鶴の一声」でペロッと話しが変わってしまうようでは

「そもそも景観保全・救助体制への協力など、地元が磨き上げに尽力して来たのに・・!」(世界的なネームバリューがあるホテルチェーン=トンビ?に油揚げ的なことになりはしないか?)

口に出しはしないでしょうが、不信感的なものを持たれてしまうのではないかと心配してしまいます。

(ちなみに黒部峡谷はどう考えても私が生きている間に「高級リゾート」にはなり様が無いかと?阿曽原小屋としては心配していませんが、立山エリアで開発の話が出れば???)

取り合えず思いつくまま書いてみましたが、全国の国立公園の中には利用の少ない場所もあるだろうし、商業施設がたくさん入っていて調整が進まない場所もあるだろうし・・・そんなことが解かっているから総理の発表に具体的なことが盛り込まれなかったのか?

取り合えず

多くの方々に観てもらえるのは賛成だけれども、立山・黒部についてはハードルが高くてトントンと話しは進まないだろうな~~~。

各国立公園の現況を詳しく調べてから進めないと、間に入る現場の役人も困るだろうな~~~。

まだまだイロイロありますが、止まらなくなるので取り合えず。

小屋は、営業しませんから!

2024-07-17

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どうすんのよ!(小屋で使う予定のコメが専用冷蔵庫で・・)

今シーズンの営業休止をお伝えいたしましたが、先日から自宅への「予約電話」が何件か入ったかと思えば・・・隣の小屋に予約電話が入り「阿曽原から向かう予定ですが、阿曽原小屋が電話に出てくれなくて・・・」と連絡が入ったので「阿曽原小屋は今年は営業しないはず」と伝えたけれど翌日も翌々日も同じ人から同じ予約が入って来たと連絡がありました??

元旦の地震災害で、今シーズンのトロッコ列車の全線運行しません! (三月に10月に復旧を目指しているとの情報が流れたからか?)

小屋の部材を乾かすために小屋は建てるだけ建てましたが、内装・厨房等々宿泊者を受け入れる体制は取っておりません。

欅平からの入下山が出来ない中、他ルート(白馬線・唐松線等)からの入山者は殆ど見込めませんし、来られたとしても食材・燃料・飲料等の補給も出来ません。

他の山小屋の様に物輸ヘリも出来ない訳ではありませんが、そもそも入山者が見込めない中でチャーターする訳にもゆきませんので営業休止といたしました。

ただし「下の廊下」の整備が終了して歩行可能になるようでしたら、黒部ダムからの往復登山者の為に「キャンプ場管理」だけは行おうかと考えております。

毎年若干ですが車の回送等の関係で黒部ダムからの往復で歩かれる方がおられますが、入山者が有れば事故・事案も発生するだろうし、指定キャンプ場以外でキャンプされる方が出れば登山道が特殊(断崖の中の細い道)なので転落事故・ゴミ廃棄・トイレ場所等々の問題も出て来るのではないかと心配しての対応です。(元気な方は「今年は阿曽原が空いている!」って入って来られる方もおられるのでは?)

あくまでも「下の廊下」整備が無事終了したらの対応です。

正直に言えば、下界でアルバイトしていた方が収入になるのは分かっているのですが(大型二種免許保有の私とすれば、富山の路線バス運転手の募集CMで支度金100万円!に釣られそうになったのですが・・) みんなの黒部の管理を国から任されているのだからシャーないけど、これも務め!だと考えることにして・・・今だから出来る事!(暇潰し?)をあれこれ妄想しているところです。

※御礼!

先日 「北アルプストレイルプログラム」 が始動したことを紹介させていただきましたが、事務局から「早速、数件振込がありました」との連絡が入りました。

このページを見ての振込とは限りませんが・・・早々にアクションを頂き感謝!感謝!です。

誰のために?ではなく!

2024-07-13

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皆の山を、ズ~ッと楽しむために!

前ページの補足ですが・・・

なんで山小屋が登山者から金銭の徴収するの? 役所に任せておけばいいのでは? 税金を投入すれば? 等々と思われる方もおられるかもしれません。

いままで管理・整備主体があいまいなまま、現場(山小屋・ガイド等)に任されて「綱渡り状態」で行われてきた面もありました。

それは現場に一番近く現場の変化を把握しつつ利用者と直接接して苦労している姿を見て来たからで「誰かがやらねば利用者が困る」ってことで頑張って来たのですが、コロナ禍での収入減・ヘリコプター代金等値上がりなどで、現場も余力がなくなって来てしまいました。

いわゆる大きめな工事は別として、普通の草刈り等の整備に土建会社・森林組合等が入って来ないのは何故か?ってことなのですが、要は業者さんが引き受けるには「割に合わない」からに他なりません。(どっかの猟友会が「ヒグマ駆除」の日当の低さに委託拒否がニュースになってましたが、そこまでとは言いませんけど・・)

ちなみに登山道改修・新設等大きな工事は国・県の予算で、一般の草刈りや軽微な整備は地元行政が負担してますが、草刈り予算増額を地元行政等に要望しても、例えば黒部市の奥山の登山道の利用者は??ほとんど富山県外の方々であり、それに従って遭難事故も連動する訳で・・・黒部市で税金を納めておられる方の大多数の方にしてみれば、あまりにも負担額が多くなれば「自分に関係ないところに整備費と山岳遭難対策体制費用遣うのは!」って思われる方も出て来るのでは?

話しは逸れましたが、そんなこんなで綱渡りで行って来たのが立ち行かなる危機感が現場ではあったのですが、これは黒部エリアだけではなく北アルプス全域だけではなく全国の山域で問題になっていた事です。

登山道が出来上がって来た経緯・整備システム(法)の不備・日本国の登山文化?等々、取り組まねばならないところはあまりにも多いのですが・・・外野でワーワー言うだけで?そのままにしておくわけにはゆきません。

山小屋は現場で日本国の宝たる「山」を預かる者として、整備・管理に関って来ましたし現場と利用者の事を一番よく知る立場に有るし「現場でかいた汗」は説得力が有るはずなのだから?、管理者である国・県等行政や関係機関と共に保全と利用に協力してゆくのは当たり前だと考えるてしまうのですが。

山小屋が管理費徴収するのはどうなの?って登山者もおられるだろうし・・・正直言えば車が横付けできる様な便利な立地の山小屋の中には「そんなこと役所に任せておけば」って温度差は有るとは思いますが、大切な「山」を守ってゆくために現場で利用者に理解してもらい山全体の為に山小屋組合をまとめるために動くのも各地区の山小屋組合長の務めかな~なんて??(また煙たがられるだろうな・・・)

動き出します!(御理解・御協力のほど御願い致します)

2024-07-13

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「北アルプストレイルプログラム」の概要説明(詳細はQRコード・リンクから)

「北アルプストレイルプログラム」 が動き出します。

持続可能な登山道維持の実現を目指し、利用者や地域関係者とともに登山道維持に協力できる枠組みを検討を進める取り組みです。

我々山小屋の仕事は「山を楽しんで無事に帰って頂くためのサポート」です。

そのためには、何が出来るのか? 何をしなければならないのか? 当ページでは、登山道整備・山岳遭難の現状等もお伝えしてきました。

しかし今まで通りの管理・整備方法のままでは、立ち行かなくなり結果として登山道が荒れれば、遭難事故が増える・環境保全に支障を来す等の問題が発生してしまうのではないかと危機感を抱いておりました。

富士山の山梨県側でも「入山料システム」が導入されましたが、いよいよ北アルプスの富山県側でも「北アルプス富山側登山道等維持連絡協議会」を立ち上げて試験的ですが取り組みが始まることになりました。

本来ならば阿曽原温泉小屋にも「協力金収集箱」を設置する予定でしたが、今シーズンは御存じのとおり営業出来ませんので 他の方法 で募金協力並びに アンケート に御協力頂ければ幸いです。

感動を発見するために旅するのでは?

2024-07-10

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手前下部に名剣温泉(崩壊面は旅館よりかなり下流ですので御安心を)

名剣温泉下流右岸側の崩壊面の写真です。

二月に欅平の除雪に入った時点で確認されていましたが、地震によって崩壊したものと推察されます。

下部3/4までは灌木がポツポツ残っているので区別がつくと思いますが、崩壊面上部は灌木が見当たらないのは今回新たに崩れたから?

祖母谷川を堰き止めるほどの規模ではありませんでしたが、相当量の崩落土砂が有ったものと思われます。(下流に押し流されて黒部川扇状地の元になり含まれるミネラルは栄養豊かな海に)

以前地質学者さんから「小黒部谷~猿飛峡~祖母谷温泉~祖父谷~唐松岳に向けて活断層があるのではないか?」と聞かされたことがありますが、現場を見て検証してみて「なるほど」って思わされることが何度もあります。

険しい地形は、長い年月をかけて風化・崩壊を繰り返しながら優しい山容になってゆくのだから激しい変化も仕方ないのですが、その険しさ・荒々しさが有るからこその感動させられる黒部峡谷なはずです。

更には、百年前から現在まで電源開発で宇奈月温泉から上流に向けて「切り開き」「整備して」「維持管理」してきた人間の凄さも黒部の見どころというか感動ポイントになると考えます。

トロッコ列車が一刻も早く復旧して、多くの方々に黒部へ来て頂き「ダイナミックな黒部峡谷」と「頑張って来た人間」を体感して感動して頂きたいと切に願うものです。

当たり前じゃないのが当たり前??(ベタベタ祭り)

2024-07-09

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途中の沢も大暴れしてました。

先ページの続き

祖母谷温泉に荷物を運びこんで遅い昼弁当を食べ始めたら・・・小屋主のトシ君が「温泉は来てるけど水が来ていない」って暗い顔して呟きます。 半月前に下見に来た時にはガバガバ水場から送られていたそうですが、水が無い事には源泉が熱くて温泉に入れないし食事も作れません。

目の前の祖母谷川には濁り水がゴーゴー流れていますが・・どう見ても食事には使えそうにないし、欅平側に戻った場所に湧き水は有るにはありますが16人分の食事を作る大量の水を取りに行くわけにもゆかず・・。

レトルト等で準備してあるわけではなく、大量の生肉系メニューだし、なにより酷暑の中脱水症状で降りて来るメンバーが喜ぶだろうと大仏の実家から送っていただいた「三輪そうめん」を作るには大量の水が必要です。

トシ君が水場の様子を見て来てくれることになりましたが、サポートに救助隊の事務局の市役所職員がついて行きました。

私と残ったものは、新品の発電機にエンジンオイルを入れたり使われていなかった部屋の掃除したりしていたのですが、カンカン照りだった空が??薄雲が広がり出したかと思ったら見る見る黒い雲に入れ替わりザーザー・ゴーゴーと強い雨が降り出して祖母谷川は一気に茶色の濁流と化してしまいました。

水場の様子を見に行ったメンバーは強雨なんて考えてもいなかっただろうし、そもそも祖父谷対岸までだし雨合羽など持って行かなかったはずです。

しばらくしてトシ君達はずぶ濡れになって次々帰って来たのですが、配管の途中で塩ビ100㍉パイプが落石で粉々になっていたそうで、補修材料を取りに来て再度向かってゆきましたが、雨は降り続いていているのですが「今更着替えても」ってことで全身に衣服がベッタリと濡れて張り付き長靴を逆さまにすればジヤーって水が流れ出すのですが・・そのまま作業に戻って行きました。

相前後してパトロール隊も次々と下山してきましたが、「もう少しで降り出されたから」ってことでレインウエアーを着ている者はおらずベタベタ人間が玄関に溢れてしまいました。

当たり前ですが普段下界で生活していると、スイッチ一つで明かりが灯りエアコンで快適になり蛇口をひねればキレイな水が出るのですが・・・今更ながら「俺達の稼業は、沢の暴れ方然り!エライところでやってるわ」なんてことを思い知らされたのでした。(そりゃ落石災害も起きてしまう訳です)

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