阿曽原温泉小屋

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知らないってことは!Ⅶ(勉強不足もほどほどにせいや!)

2020-06-01

写真

5月の池ノ谷二俣(古いですが、高島石盛さんの遺品の中から出て来た写真です)

つづき。

トラバースして来たラインは、断崖の上縁みたいなルートだったのですが、当然下降するのは断崖&藪のミックス斜面でザイルが無いととても入れるエリアではありません。

最初に一人の先輩が、下方に見える立木目指して懸垂下降で降りてゆき、その立木は安定している様なので次々と先輩方が壁を降りてゆきます。

そこから先の様子は我々からは見えなかったのですが、悪戦苦闘の様子が無線で入って来ましたが、3・4ピッチ刻んで下降したところで河原に降り立ったとの連絡が入ります。

しばらくして「大学生パーティーと合流、怪我人はいないが消耗している」との連絡が入ります。

いくら夏場でも、ゴルジュ内は日照が無い・周りを雪融け水が流れる・冷たい飛沫に一日中濡らされるているのだから気温が低く、彼等が助かったのは、・テントを張ることが出来た・メンバーが若く怪我をしていなかったから耐えることが出来たのでしょう。

我々は馬場島経由で警察本部に無線で報告しますが、谷が深く狭いゴルジュの中は日没時間より早く暗くなり出していて、悪相の断崖をヘッドライトを点けて全員無事に登り返すのは危険過ぎるし幸い翌日も晴天予報なので、現場と本部の協議で「ビバーク」することになったのでした。

(一本のザイルを利用して、人間が上下で行動するということは上部の人間が落石を誘発させる危険が非常に大きくなります。ましてや暗い最中では、トップは不安定な石も見えないし続く人間は上部で落石が発生していても見えないから避けることも出来ないのです)

続く。

※写真は 「池ノ谷二俣」 (地図を参考にしてください、谷も尾根も激しいエリアなのです!)

・左側上部に伸びる雪渓が「池ノ谷左俣」(上部のコルが三の窓) 

・中央の岩稜が「劔尾根」(「劔尾根」から転落して右俣のシュルンドに潜り込んだ遺体回収の話ししたはず) 

・右側上部に伸びる雪渓が「池ノ谷右俣」(落石・ブロック雪崩の巣!何回入っても嫌なところです)

遭難パーティーは、三の窓から左俣を下ってゴルジュ入り口手前から右側の小窓尾根に登り返さず谷筋通りに下山しようとしたのです。

知らないってことは!Ⅵ(人跡未踏!・・・多分?)

2020-05-31

写真

イメージですが、ゴルジュの側壁は飛沫で濡れてズルズルです。(十字峡の釜)

つづき。

急斜面の藪トラバースを必死で先輩に着いて行きますが、装備が重く大きくて引っ掛かってしまい・・・強引に藪を掴みながらの行動は、時々「ブチッ」と藪が千切れるたびにヒヤヒヤさせられます。 どの藪(草・枝)が、強いのか?どの方向に力を入れれば大丈夫なのか?等々、知識が有ると無いでは大違い!(なんでも一緒ですが、体力・腕力だけではなのです?って私が言っても説得力がないのですが・・・)

藪の生えていない崖は、クライミングしながらのトラバースも草・泥・小石が乗った岩盤斜面でイヤーな感じです。

そんな中を2時間ほど進んだ辺りで、直径20㎝チョイの「しっかりした立木」が2本ほどあって、空も若干広く見える棚状の安心できる??ポイントに出ました。(何かに掴まっていないと立てない場所でも「安心」って??壊れ始めていました)

そこに全員(5~6人だったか?)集合して、その「立木」から各自のハーネスにスリングでセルフビレイを取って作戦会議です。

ここまでは藪が濃く斜面も厳しくて、ゴルジュの中を覗けずに来たが入り口の滝は既に超えているはず。 

ザイルを伸ばして下降するには、ポイント毎の出発点で「支点」にザイルを固定する必要があるのですが、まさに今いる場所の「立木」が立派な「支点」となります。

ちなみに、立木が無ければ岩の割れ間にハーケンを打ち込んで「支点」としますが、スッキリとしたクライミングゲレンデと違い「人跡未踏」の遭難現場では都合よく具合のいい割れ目なんてなかなか見つけられません。

また救助現場では、支点に救助者と遭難者の二人分の荷重が掛かることもあるし、スリップした時の「衝撃荷重」はもっと大きな荷重が掛かるのでしっかりした支点が必要です。

更には、下降するにも藪にザイルが絡まるので、こちらも違った意味での技術と経験が必要になってきます。

レスキューのデモンストレーション見ると「カッコイイ」って思われるかもしれないけど、これまで何回も書いてきましたが現場は「冷や汗」「泥」「返り血」「擦り傷」「死臭」「腐臭」にまみれて「息を切らせながら」のバッチイ作業なんです。(遣り甲斐あるから!続けて来れた??ってキレイごとではなく・・・好き好んで現場に出ている訳ではないし、でも何故か否応なく出動って事が結構あったりして?成り行き任せな人生なのです)

話しを戻しますが、下方を覗くと谷底までは見えないけど、ザイルの長さワンピッチ分辺りにも立木が見えます。このルート以上の侵入口はこの先出て来るか分からないし、既に午後も過ぎており明るい間に合流出来なければ断崖絶壁の縁の藪の中で身動きが取れなくなります。

私とN隊員のペーペー二人を追加のザイル補給等のサポートと残して、先輩たちが下降してみることになりました。

続く・・・。

すみません、なんか最近、話がまとめられなくて・・・。

お知らせ!

2020-05-30

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昨夕の朝日岳!雪が融けて・・・今シーズンは朝日小屋は営業しませんから!

数年前に、黒部峡谷の取材に来ていた「NHKジオ・ジャパン」のスタッフから連絡が入りました。

「ジオ・ジャパン2」の ダイジェスト動画 が、YouTubeに上がっています。

○家の近くの黒部川の流れの奥に雪を頂いた朝日岳のシーン!  ○紅葉の下の廊下をドローンで撮影したシーン!

が短いですが使われていました。(キレイな映像でした)

峡谷部分は阿曽原に泊まり込んで、下流域は黒部の流れはもちろん湧水群・扇状地撮影等を一緒に回りましたので、彼らが頑張っている姿を見て知っています。

あれだけ、私がサポートしたんだから! いい番組に仕上がっているはず??? 時間のある方は見てやって頂ければと思います。

※放送予定

①NHKスペシャル 「シリーズ日本列島誕生ジオ・ジャパン2」

●第1集 「列島大隆起」※北アルプスと関東平野が主な舞台です。

 (本放送)6/14(日)21:00~(49分) 総合・BS4K同時放送

 (総合での再放送)6/17(水) 前0:30~1:19  (BS4Kでの再放送)6/21(日)15:00 BS4Kのみ

●第2集 「列島大分裂」※瀬戸内海と九州が主な舞台です。

 (本放送)6/21(日)21:00~(49分)総合・BS4K同時放送

 (総合での再放送)6/24(水) 前0:30~1:19  (BS4Kでの再放送)6/28(日)15:00 BS4Kのみ

②前回のシリーズの再放送 NHKスペシャル 「列島誕生ジオ・ジャパン」

●第1集 奇跡の島はこうして生まれた 6/9(火) 前1:55(1:45)~2:44  ※10分繰り上げの可能性があります。

●第2集 奇跡の島は山国となった 6/10(水) 前0:30~1:19 

なお、突発ニュースがあれば、 放送日が変更になる可能性がある点はご了承ください。

知らないってことは!Ⅴ(救助はサバイバルです)

2020-05-30

写真

黒薙駅先の後曳です。(ゴルジュのイメージ)

つづき。

右岸斜面は岩壁と藪のミックスとなっており、高巻きするにしてもかなりショッパそうで、左岸の取り付きは先が見通せないほど藪が濃いのですが、谷筋の垂壁の上は若干緩そうに見えるから侵入口にすると先輩達が決定します。(あそこを「緩そう」なんて事を言う時点で壊れている人達なのですが)

斜面は藪に掴まれば立つことが出来るのですが・・・しっかりした樹木はそれほど多くは有りませんん。岩盤の上に土砂・泥などが溜まってその上に藪が密生している感じなので、堆積層はそれほど厚くは無く当然ですが根は浅くて頼りなく・・・何本も藪をまとめて掴みながら前に進みます。

この時驚いたのが、山菜の「ゼンマイ」の多いこと太いこと! 既に収穫時期は過ぎて伸び切っているのですが、茎の太さ・全体の長さを見れば収穫時期に来ればキスリングを一杯にするのもあっと言う間でしょう。(ワラビ・山ウド等を獲りに行くときにも、前年に立ち枯れした茎を見つけておくと探す手間が省けるのです)

言われてみれば 称名川「悪城壁」(あくしろのかべ) 上部斜面と一緒で、岩盤の上に薄く堆積した泥斜面には「ゼンマイ」が良く生えるのです。 ですが・・・いくら立派なゼンマイでも、来年ここに採りに来る気には全くなりませんでしたけど。

それでもシッカリした樹木も生えている場所があって、集まったり休憩する場所になります。そんなところは、岩盤の割れ目?尾根状の場所等理由が有るはずです。

先にも書きましたが、ここまで険しく藪が濃い場所は地形図に反映できている訳もなく・・・そもそも藪が濃くて見通しが効かず、移動した距離・斜面の方向・傾斜・樹木の大きさ等々を駆使してルートを探りながら進みます。

これらを総合的に判断するのが山の感かと、登山道だけ歩いていてもなかなか身につくものではないのですが、いろんな斜面・藪に入ってこそですが「山菜採り・イワナ釣り」等は山の感が磨かれるかと。

山菜の話になると、ついつい話しが逸れるので・・・まだつづく。

※写真

写真は、黒薙駅を発車直後に渡る「後曳橋」の上流側です。

今回の話で向かった「池ノ谷ゴルジュ」は、もっと距離が長く暗いのですがイメージとして載せてみました。

こんな断崖の上部斜面を横切って行って、遭難者が待つポイントに下れる「涸れ沢」等アプローチし易いルートを見つけて進んで行くのですが、知らない険しい山で想定外の事態にも備えつつ身を守りながら進むには「体力」「知識」「山の感」を備えていなければ!(レスキューに対する「熱い気持ち」は当然ですけど)

こういうのも サバイバル能力 って言えるのでは?

難しく考えず「山で遊べば」ある程度身に着くってことなのかな~って思うのですが?

知らないってことは!Ⅳ

2020-05-29

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朝焼け!

つづき。

下流のゴルジュ帯にテントが張られているのだから、間違いなく生きているはずだが・・・こんな危険な場所を、大学パーティーは本当に下降していったのだろうか???

谷筋からの下降は危険過ぎます、たとえ遭難者と合流しても滝も側壁の岩壁も登り返すにはルート工作には膨大な装備と時間が掛かります。

まして怪我人がいるかもしれないし、合宿最終で行き詰まったとすれば水だけ飲んで凌いでいるかもしれず、こんな岩壁の登り返しする体力が無いかもしれません。(轟音響く中でテントにいた彼らとは、コミニケーションが取れていなかった記憶が)

ちなみに、ヘリコプターから直接ホイスト下降しての救助は、容赦なく狭く深い「池ノ谷ゴルジュ」核心部へ侵入なんて最初から論外で検討もされなかったのでは?

当時のベル206Lでは、パワー不足で侵入は無理だとペーペー隊員の私でさえ思ったし、現在のパワーのある機体でも、機体が大きくなった分尚更ギリギリの隙間しかなくなるはずなので無理ではないかと?って言うか、そんな救助を考えるのは正気の沙汰ではありません!

地形図 を参考にしてもらえれば狭さが分かりますが、国土地理院だって調べようのない険しさで岩壁マークを並べるだけの場所なのです。 

加えて側壁からは、所々樹木・雑木が峡谷内に倒れ込むように伸びているのを避けながらの飛行なんて、ローターが何かに触れようものなら即墜落です。ヘリに乗りたがりの私ですが想像しただけでさすがに・・・。

仕方ないので、割と藪が濃く若干傾斜が緩い左岸の側壁をトラバースして進んで、谷底まで下降出来そうなポイントを見つける作戦となったのでした。

続く。

頑張りましょう!

2020-05-28

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ソーシャルディスタンスで、スカスカに見えますが・・・かなりの出席率でした。

今日は午前中から、山小屋のコロナ対策会議の集中日みたいな・・・。

保健所・県庁・山岳警備隊等からの説明と情報共有が! 皆さんに山に来てもらうために各組織が、何をしなければならないのか?何が出来るのか?

掘り下げると、どこまで話が大きくなるの?って、気が重くなりますが・・・。

「登山者を守り・山で働くものを守る!」が大原則です。ブレずに対応を考えてゆかねば。

詳細は、まとまったところで報告しますが、今回聞こえて来るのは「山小屋業界」がバラバラってことが・・・取り合えず「北アルプス」は一つの組合なのですが、「富士山」「尾瀬」「南アルプス」等など、山の険しさ・経営スタイル・客層等々、山域ごとに全然違うので話がまとまるはずもないのですが・・・今後の課題です。

取り合えず、今日はスケジュールの密な会議で疲れたので飲んで寝ます。

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