阿曽原温泉小屋

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知らないってことは!

2020-05-25

写真

馬場島から見た、右奥影の中が「池ノ谷」、四角いピーク(マッチ箱ピーク)から中央に下るのが「小窓尾根」

夏山シーズンお盆辺りだったと思いますが、某大学山岳部パーティー(4・5人?)が剣沢キャンプ場での定着合宿から戻らず連絡もつかないと捜索要請が入りました。

若く元気なパーティーだし、まとめて全員が転落等遭難しているとは考え辛いし・・・剱岳周辺は、まだまだ登山者が色んなコースで行動しており、一般登山道・バリエーションルート共に事故やアクシデントが発生すれば連絡が入るはずです。

予定では、三の窓~ 池ノ谷~小窓尾根1,614m ~馬場島への下山ルートですが、夏の終わりは池ノ谷の雪渓が下部では消えていて激流となっているはずで、ゴルジュ帯入り口まで間違って下っても見れば進めないのが分かるはずだし、地形図 を見れば険しい谷になっているか一目瞭然!嫌でも右岸の小窓尾根に取り付くはずです。(下の廊下みたいに広くはなく、狭く・暗く・濡れているイメージ!)

それとも、誰も行動しない時間帯に大きなクレパス・シュルンドにまとめて転落したか?様々なシュミレーションをしてみるが???

私はN隊員や先輩隊員と共に劒沢警備派出所勤務をしていたのですが、翌早朝から県警ヘリコプター(初代つるぎ:ベル社製206ロングレンジャーだったから、かなり若かったはずです)に先輩隊員が乗り込んで剱岳周辺を空から捜索して、私とN隊員らペーペーの陸上要員は一般登山道ではないエリアに空輸されて、2・3日間ほど長次郎雪渓・北方稜線雪渓の縁のシュルンドを覗きに行かされる計画だったかと。

私達は翌日からの捜索に備えて、テント・コンロ・登樊装備・食料等などを準備して明日からの捜索に備えたのでした。

続く。

※参考

写真中央手前が早月尾根の松尾平、小窓尾根は奥の雪が積もって右奥ギザギザに伸びてます。

文中の「池ノ谷~小窓尾根1,614m」をクリックすると地形図が見れるので参考にしてください。

当たり前の風景!

2020-05-24

写真

「ニギス」のすり身、色は悪いけど欠かせない食材です。

「キス」に似ているから「ニギス」!目が大きくなるから「メギス」! 富山では「ミギス」と呼ぶことも。

生でもスーパーや魚屋さんに並びますが、写真の通り「すり身」にして「味噌汁」「鍋」「おでん」にして食べますが、富山の居酒屋では「すり身揚げ」として、そのまま揚げる・ネギなど野菜を足して捏ねてから揚げる等、お酒の「おつまみ」としてよく食べられてます。

地元の海産物会社・鮮魚店の手作り品等、いろんな種類の「すり身」が作られていて値段も食感も様々です。(基本安いのですが、鱗や小骨がほぼまんまの粗挽きなのとか、混ぜ物で延ばしたの?みたいのとか)

阿曽原小屋でも、冷凍にしておいたものを味噌汁にして時々食べてもらっています。(私的に、ネギとの相性が最高だと思うのですが)

ニギスは「干物」としても良く食べるのですが、けっこう脂が乗っていて焼き網が炎上することもあるほどです。(上物でオキアミを、お腹一杯食べているのに当たるとラッキー感が)

毎年のお歳暮には、「自分がもらって嬉しいから」黒部市生地の干物屋さんからニギス等いろんな干物を送ってもらっています。(各家庭では、キッチンが一時下品な煙が立ち込めているはずですが・・・)

コロナウイルス騒ぎが治まったら、富山に美味しいモノを食べに来てください!

やっぱり神様の掌の上?Ⅻ(山仕事の予行演習?)

2020-05-24

写真

雲海に浮かぶ白馬方面!(左端雲の下辺りが阿曽原)

目出度く帰還できた三人でしたが、道のない藪山に地形図だけを頼りに「勢い」だけで向かってみて黒部の濃さを思い知らさて・・・将来廻ってくる山仕事の勉強になったのでした。

○標高・地形・斜面の向き等で、植生が変わって藪漕ぎの困難さが全然違ってくること。(山菜取りに通えば解ってきますが、最短距離に惑わされない様に)

○藪漕ぎは出来ても、刈り込んでしまうと登山ルートとしては利用出来ない斜面が黒部では殆ど。(藪漕ぎばかりしていると、普通の登山道歩きの感覚が無くなって)

○山懐が深い山域で、熊の餌になる植物も多く冬眠時の寝床になる巨木が多い等の理由からか?ハンパなく熊の気配が濃いエリアでした。(爪痕・食痕・足跡に気を配る様に)

○地形図を読んで、ゴルジュ帯が待ち構えているのに下降して怖い目に遭ってしまった。(ちゃんと資料を信じて、自分の都合のいいように解釈しないこと)

○季節を読まずに行動したので、水量・水温・水勢の厳しさに真剣にビビりました。(秋口になれば水量が減って来るのですが、オマケに砂防堰堤が有って・・・言い訳するんじゃない!)

でもこの経験が?いろんなことに目を向ける事を覚えて、「中背尾根」の伐開、仙人谷登山道の迂回ルート作り、「雲切新道」の伐開等、この先の山仕事に生かされてゆくのでした。(痛い目に遭わないと分からん奴らですが、見方を変えればシブトイのかも)

行方不明者の捜索や発見救助活動をしてきた経験から、「山で迷うと谷に下る」傾向が有るのは知っていましたし、特に黒部エリアでは下れば下るだけ滝・断崖が出て来て進退窮まり、その頃には消耗しきって登り返す気力も無くなり・・・。

山を下りようとするのは道迷いの行動パターンですが、それを解っていながら「近道」「簡単そう」等の誘惑に負けて、自分を過信して突っ込んで「縮み上がって???」しまったのです。

皆さんも「自分は藪漕ぎをしないから」って思わずに、去年の8月17日に書きましたが道から外れて 行方不明 になる遭難が時々あるという事は、自分も一般登山道からルート外に迷い込んでしまう事が無いとは限らないし、そういった事態に陥ってしまったら思い込みで下り過ぎないことを肝に銘じておいていただければと。

次回は、N隊員とのあり得ない行方不明パーティー捜索の話を書けたらと思います。

「武士は食わねど高楊枝」・・・違いますから!

2020-05-23

写真

「のんびり感」溢れる阿曽原小屋?

ありがたいことに、方々から「阿曽原」を心配してくださっている声が届いております。

阿曽原温泉小屋は夏場は営業いたしません! と聞いて、ブッチャケ「収入が無くなるから大変だろう」と心配されての事だと思います。

我々は4半世紀余の間に、水害・落石・大雪等の災害で全く営業出来ない&ほとんど営業にならないシーズンを何度も経験して来ました。 たまたまラッキーな?廻り合わせで仕事が入ったり、その都度自分達が出来る仕事をこなして乗り越えてまいりました。

黒部という特別厳しい環境の中での経営なので、事案が有るのが当たり前で臨機応変対処してゆくのは遭難現場と同じというか、見方を変えて~考え方を変えて~知恵を出してその場を乗り切るしかない!って、考えるようにすればいいのかな~って。(当たり前・普通、なんてことは黒部には無いし「想定外」って逃げてはいけないのです)

今回のウイルス騒動では、小屋建て・食材等の仕入れ前でしたので前回までの様に支払いに困ることがないのが不幸中の幸いですし、そもそも経営規模の小さな個人経営の小屋ですので、従業員を沢山抱えている訳でもないので、大変は大変なんですが頑張れば凌げると思っております。(大規模経営の、桁違いの苦労は想像しただけで・・・)

確かに様々な事情で、一生懸命頑張っているけど「苦境に陥っている山小屋」も有るはずです。 そんな山小屋には、個人的な応援や クラウドファンディング 等で御支援を戴ければ大変有難い事ですし、暖かい御支援は必ず山好きな方々にいろんな形で還って来るものと考えます。

阿曽原温泉小屋は、現在まで関係者の「遭難」「闘病」等の支援を全国の方々に募って実際に助けられて参りました。 皆様の温かい気持ちは身に染みているつもりですので、今のところは気持ちだけありがたく受け止めさせて頂きますので、どうか御気遣いはなさららぬ様にお願いいたします。

イヨイヨとなれば(汗)お願いするかもしれませんが、今はまだ頑張れまーす!

やっぱり神様の掌の上?Ⅺ(持って生まれたもの?)

2020-05-22

写真

人喰い岩直下の祖母谷川(渡渉は厳しいのです)

続き。

砂防堰堤を超えて下流左岸の藪斜面を高巻きするには、かなりの登り返してからトラバースしなければならないし、最後に川に降りる辺りが高い崖斜面の直下に激流が見えて・・・その先はカーブしていて見通せません。(下流に向かえば枝沢が合流して水量も増えるはず)

見えないところに突っ込むくらいなら、「遡って渡渉すれば」と観察してみます。上流側から対岸の下流に向けて、流れに逆らわずに流されるように向かうのが基本ですが、急流の底にある川床の様子を「水流の泡立ち」「うねり方」等で予想してルートを見つけねばなりません。

(ちなみに私が小学生の頃は学校にはプールが無く、夏休みには黒部川の河原に町役場?がブルドーザーで大きなプール?池?を作ってくれて、そこに水を引き込んで「流れるプール」で泳いで潜って魚突いて育ったので水の怖さは知っているつもり)

私や大仏の体格ならば行けそうなルートを見つけたのですが、S君は小柄で体重も軽く決定的に不利なことに腰から下の寸法が・・・想像してください?私たちが股下水深でも、彼は水流・・・軽めの体重で水の抵抗が大きくなれば当然流されるリスクは大きくなるのです。(さすが「外さない男」、こんなところでも魅せてくるのです)

シャーないので、私とS君二人で肩を組んで流れの中に入って行って渡渉することに、水流の強さもそうですが見込みより深く、なにより冷たさが厳しくて「ヒーヒー」叫びながら慎重だけど慌てながら?渡り切ることが出来たのでした。

(女性には判らないと思いますが?冷たくて「縮み上がる」を通り越して「縮んでカチカチに固まる」感じで・・・人体の不思議?)

次回は、反省点を挙げてみようかと・・・。

やっぱり神様の掌の上?Ⅹ(想像力!)

2020-05-21

写真

旭~白馬~白馬鑓(中央白い山)~天狗の頭~大下り! 仙人池より

続き~。

藪を突破した場所は、河原からは20mほど高さで数年前に崩壊して「山ウド」が生えている急斜面の縁でした。

そのまま降るには危険なので、斜面に正対しながら「山ウド」を掴みながら(もったいないけど、次の人間が掴める様に折らずに!)足場を探りながら慎重に下って一安心です。

早速に渡渉出来そうな場所を探します。 下流側の砂防堰堤に近づけば、水流の幅は5m余りで水深も深いところで膝上位なのですが・・・とにかく水の勢いが強く、もしもバランスを崩したら止まれそうにありません。

砂防堰堤の上は、コンクリートがほぼ水平に幅1m余りで対岸まで続いていて水流も更に幅が広いのですが、高さが10数mもあって見下ろすと堰堤のコンクリートは平らで薄茶色いコケが生えている様に見えて滑れば即落下です。

私や大仏クラスの体格でも迷うのですから、私達よりサイズが少し小さめのS君なので、とても堰堤上を歩いて渡れるとはおもえません。

(「ニャンコ先生」ならば、落下しても無事着地出来そうだけど・・・「いなかっぺ大将」 の、受け身の上手い柔道の先生って?ちなみに、柔道部の顧問は「黒部先生」なのです。ヨイ子の皆は、知らんかな?)

想像してください、キンキンに冷えた雪解けの激流もろとも10数mダイブして、直下のコンクリートの基礎スラブに激突すれば全身骨折して脳天カチ割れて、激流に押えられて流木に引っかかるか?深みに沈んだまま浮き上がれずに?おまけに回収しに来る救助隊員の迷惑を想像すると・・・「僕には行けません!」ってことになります。

ダメ元で上流の様子を見に行くと、やはり川幅は狭く水量・水勢とも多く強いのですが、流れのウネリ・泡立ち・透明感等を観察して対岸までなんとか渡渉できる場所がないか探ります。

終わらんかったから、まだ続く。

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