阿曽原温泉小屋

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知らないってことは!Ⅴ(救助はサバイバルです)

2020-05-30

写真

黒薙駅先の後曳です。(ゴルジュのイメージ)

つづき。

右岸斜面は岩壁と藪のミックスとなっており、高巻きするにしてもかなりショッパそうで、左岸の取り付きは先が見通せないほど藪が濃いのですが、谷筋の垂壁の上は若干緩そうに見えるから侵入口にすると先輩達が決定します。(あそこを「緩そう」なんて事を言う時点で壊れている人達なのですが)

斜面は藪に掴まれば立つことが出来るのですが・・・しっかりした樹木はそれほど多くは有りませんん。岩盤の上に土砂・泥などが溜まってその上に藪が密生している感じなので、堆積層はそれほど厚くは無く当然ですが根は浅くて頼りなく・・・何本も藪をまとめて掴みながら前に進みます。

この時驚いたのが、山菜の「ゼンマイ」の多いこと太いこと! 既に収穫時期は過ぎて伸び切っているのですが、茎の太さ・全体の長さを見れば収穫時期に来ればキスリングを一杯にするのもあっと言う間でしょう。(ワラビ・山ウド等を獲りに行くときにも、前年に立ち枯れした茎を見つけておくと探す手間が省けるのです)

言われてみれば 称名川「悪城壁」(あくしろのかべ) 上部斜面と一緒で、岩盤の上に薄く堆積した泥斜面には「ゼンマイ」が良く生えるのです。 ですが・・・いくら立派なゼンマイでも、来年ここに採りに来る気には全くなりませんでしたけど。

それでもシッカリした樹木も生えている場所があって、集まったり休憩する場所になります。そんなところは、岩盤の割れ目?尾根状の場所等理由が有るはずです。

先にも書きましたが、ここまで険しく藪が濃い場所は地形図に反映できている訳もなく・・・そもそも藪が濃くて見通しが効かず、移動した距離・斜面の方向・傾斜・樹木の大きさ等々を駆使してルートを探りながら進みます。

これらを総合的に判断するのが山の感かと、登山道だけ歩いていてもなかなか身につくものではないのですが、いろんな斜面・藪に入ってこそですが「山菜採り・イワナ釣り」等は山の感が磨かれるかと。

山菜の話になると、ついつい話しが逸れるので・・・まだつづく。

※写真

写真は、黒薙駅を発車直後に渡る「後曳橋」の上流側です。

今回の話で向かった「池ノ谷ゴルジュ」は、もっと距離が長く暗いのですがイメージとして載せてみました。

こんな断崖の上部斜面を横切って行って、遭難者が待つポイントに下れる「涸れ沢」等アプローチし易いルートを見つけて進んで行くのですが、知らない険しい山で想定外の事態にも備えつつ身を守りながら進むには「体力」「知識」「山の感」を備えていなければ!(レスキューに対する「熱い気持ち」は当然ですけど)

こういうのも サバイバル能力 って言えるのでは?

難しく考えず「山で遊べば」ある程度身に着くってことなのかな~って思うのですが?

知らないってことは!Ⅳ

2020-05-29

写真

朝焼け!

つづき。

下流のゴルジュ帯にテントが張られているのだから、間違いなく生きているはずだが・・・こんな危険な場所を、大学パーティーは本当に下降していったのだろうか???

谷筋からの下降は危険過ぎます、たとえ遭難者と合流しても滝も側壁の岩壁も登り返すにはルート工作には膨大な装備と時間が掛かります。

まして怪我人がいるかもしれないし、合宿最終で行き詰まったとすれば水だけ飲んで凌いでいるかもしれず、こんな岩壁の登り返しする体力が無いかもしれません。(轟音響く中でテントにいた彼らとは、コミニケーションが取れていなかった記憶が)

ちなみに、ヘリコプターから直接ホイスト下降しての救助は、容赦なく狭く深い「池ノ谷ゴルジュ」核心部へ侵入なんて最初から論外で検討もされなかったのでは?

当時のベル206Lでは、パワー不足で侵入は無理だとペーペー隊員の私でさえ思ったし、現在のパワーのある機体でも、機体が大きくなった分尚更ギリギリの隙間しかなくなるはずなので無理ではないかと?って言うか、そんな救助を考えるのは正気の沙汰ではありません!

地形図 を参考にしてもらえれば狭さが分かりますが、国土地理院だって調べようのない険しさで岩壁マークを並べるだけの場所なのです。 

加えて側壁からは、所々樹木・雑木が峡谷内に倒れ込むように伸びているのを避けながらの飛行なんて、ローターが何かに触れようものなら即墜落です。ヘリに乗りたがりの私ですが想像しただけでさすがに・・・。

仕方ないので、割と藪が濃く若干傾斜が緩い左岸の側壁をトラバースして進んで、谷底まで下降出来そうなポイントを見つける作戦となったのでした。

続く。

頑張りましょう!

2020-05-28

写真

ソーシャルディスタンスで、スカスカに見えますが・・・かなりの出席率でした。

今日は午前中から、山小屋のコロナ対策会議の集中日みたいな・・・。

保健所・県庁・山岳警備隊等からの説明と情報共有が! 皆さんに山に来てもらうために各組織が、何をしなければならないのか?何が出来るのか?

掘り下げると、どこまで話が大きくなるの?って、気が重くなりますが・・・。

「登山者を守り・山で働くものを守る!」が大原則です。ブレずに対応を考えてゆかねば。

詳細は、まとまったところで報告しますが、今回聞こえて来るのは「山小屋業界」がバラバラってことが・・・取り合えず「北アルプス」は一つの組合なのですが、「富士山」「尾瀬」「南アルプス」等など、山の険しさ・経営スタイル・客層等々、山域ごとに全然違うので話がまとまるはずもないのですが・・・今後の課題です。

取り合えず、今日はスケジュールの密な会議で疲れたので飲んで寝ます。

知らないってことは!Ⅲ(本物の轟音!)

2020-05-27

写真

「三の窓雪渓」てっぺんのコルが三の窓!裏側が「池ノ谷」左又になります。

続き。 

我々は、「池ノ谷ゴルジュ」上流にヘリで運んでもらって現場に向かうことになりました。

へりから降り立ったところは広い河原でしたが、「ゴルジュ」の入り口に近づくと両岸の急斜面が迫って来て、狭く暗い谷筋はツルツルに磨かれた岩の割れ目を勢いよく水が流れています。

地形図の中心が、ヘリで降りたポイント!下流のゴルジュの険しさが分かるはず)

少し下流では、水流が一旦空中に膨らむように見えているのですが・・・その先は滝となって落下している様子で、激しい水流は空気を震わせて轟音を轟ろかせ・・・隊員間の声は届かず大声で呼んでは身振り手振りで合図を送りあいます。

危なーい!!! 

右岸を先行して滝の落ち口を観察していたK先輩の、直上の岩盤斜面にかろうじて張り付いていた?乗っていた?ビールケースを潰したほどの岩がズルズルとユックリと岩盤斜面を滑り出して、このままではK先輩に直撃してしまいます。

みんなで大声を出しますが、水の音が激しくて声が届きません。

一瞬K先輩が振り返って、我々が血相を変えて上の岩盤斜面を指さしているのを見て???異変を感じたのか、振り返りもせずに斜面から離れるように一歩飛んだ直後にビールケースは直前までK先輩が立っていた場所に落下して来て、岩棚でバウンドするように滑りながら滝の落ち口からゴルジュの中に吸い込まれていったのでした。

つづく。

※三の窓雪渓は「氷河」!

写真は、紅葉しているから分かる通り秋なのですが、それなりに雪渓が残っています。

なにかと何時もお世話になっている、雪氷額の権威「飯田肇先生」達の調査で、この三の窓雪渓が「氷河」であると認定されました。(最下層の氷は、数百年前のものとのことです)

極東ではカムチャッカに残る程度との通説を、「ひっくり返した」のですから、なんでも「常識」にとらわれずですよね!

 

予行演習?

2020-05-26

写真

コゴミ・カブ・キュウリ・ニンジンを刻んで。

外に出れないし家で飲んでますが、阿曽原小屋で作っている 「あなんたん霊水入り醤油」 で野菜を漬けてサラダ感覚?で食べてます。 

写真は、コゴミの先っぽを和え物にして残りの茎を野菜に足して漬けてみました。塩が強い時は野菜を足して、薄い時には塩昆布混ぜて・・・家飲みのツマミ作りは私の仕事です。

そんなことより、早く小屋でお客さんに食事を出してあげて、喜んでもらえる日々が来てくれると良いのですが・・・。(予行演習?調理訓練?みたいに、三日に一度は漬けています)

※圧巻です!!!(騙されたと思って、見てみられ)

先日「クリス・ボッティ2008」ライブでの「スティング」を紹介しましたが、同ライブで是非とも見てもらいたいのが

ジャズドラマー「ビリー・キルソン」のソロプレイ  汗だくで見せる魅せる「スゲーッ!」って何回見ても思うし、最後にライブに参加したアーティスト「ヨーヨー・マ」「スティーヴン・タイラー」等など全員が揃って・・・どんだけ豪華なん!って思わされますから。

知らないってことは!Ⅱ

2020-05-26

写真

裏劔!(実際に見ると大迫力なのです)

続き。

翌早朝、県警ヘリ「つるぎ」が剣沢警備派出所前のキャンプ場トイレの屋根に着陸して、まずは先輩隊員が乗り込み下山ルートを上空からトレースするために捜索に向かいます。

「つるぎ」が出発してから30分位して、警察本部と「つるぎ」が通話している様な???剱岳を挟んだ「池ノ谷」上空から剣沢まで遭難対策無線の電波が届きません。

派出所の連絡要員隊員から、本部からの電話連絡で「池ノ谷」ゴルジュの中でパーティー発見!との一報が入ります。

どうして、そんなところに下れたのか??? 

ゴルジュ入り口の大滝下流と、その下流にある次の滝までの間の谷底にテントを張っているとのことです。

「池ノ谷」 は別名「いけぬ谷」と呼ばれて、特に下部のゴルジュ帯は大雪の年の春山シーズンに雪で埋まっている時以外は通過は無理! 滝が連続・両岸岩壁の急峻さ・水量の多さ・水勢の強さ・流路の狭さ等々、梅雨明けに下流からアプローチしたことが有りましたが・・・とても奥に進もうとは?進めるとは思えませんでした。

(雪で埋まっている時期ても、常に雪崩・ブロック雪崩の危険があるので、ヨイ子の皆さんは春でも行ってはいけません!地形図見ると、岩壁マークだらけでしょ)

救助方針は、隊員全員をゴルジュ上流の広い「池ノ谷」にヘリで空輸して、ゴルジュ左岸側壁をトラバースして遭難者の真上辺りの若干優しい藪斜面を谷底まで下降して合流後、側壁に登り返して上流に向かうことになりました。

続く。

※仙人池からの裏劔!

左端から右に伸びる 「八ツ峰」 (以下、説明しだすとキリが無いので、左側からコルの紹介を中心に)

写真中央に深く切れ込んでいるのが「5峰・6峰のコル」(下るルンゼに雪が詰まっている)

最高峰(長次郎の頭・チンネ等)左側の小さななコルが「7峰・8峰のコル」

右側残雪が前面に張り付いた、大きなコルが三の窓!(裏側に下る谷が「池ノ谷」)

三の窓コル、右隣が「小窓ノ王」 右端が「小窓ノ頭」と小窓尾根が馬場島に下ります。

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