突入時は、横坑直下まで濁流がゴーゴーと!
「新黒二発電所」の横坑真上辺りまで、藪斜面にザイルを張り込みながら関電職員をサポートしながらトラバースして行きます。
登山道が無く視界の効かない「藪漕ぎ」「雪山」は登りに使うとルートを探しながら歩ける場所を選べるのですが、下りでは方向を間違うととんでもない壁や巨岩に行き当たったときに登り返せないことが有ります。(何度も痛い目・怖い目に遭ってきました!登りは間違っても、ほぼ引き返すことが出来ます)
対岸の監視役メンバーに無線で連絡を取りますが、向こうからは藪が濃くて我々が見えない様で、ヘッドランプ照射・藪を揺する・最後は発煙筒を焚いて等しながら、こちらの進むルートを誘導してもらいます。
そんなことしなくても、河原まで下りやすいルートで降りて河原から横坑にアプローチすればと思われるかもしれませんが、この日もまだ水が引いておらず川幅一杯の濁流が横坑直下を勢いよく流れていて、間違って下ってしまい登り返せなくなったら致命傷なので慎重になります。(洪水時には横坑まで水位が上がり発電所内に流れ込んだ?)
何度も言いますが、若く元気には見えますがクライミング初心者でボディハーネスを付けたこともカラビナを使ったこともない様な人間を、いきなり獣エリアに連れて行く訳ですから慎重の上にも慎重になります。
先行してザイルを張り込んでルート工作して、初心者さんが頼れるようにしてアクシデントでそのザイルを手放しても落下しない様に別途ザイルを初心者さんのハーネスに繋いで、そのザイルを後方で確保しながら進むので時間が掛かりましたが、ミッションインポッシブル?のごとく無事に発電所への突入に成功して内部確認任務を終わらせることが出来たのでした。
先のページで書きましたが黒部は生きています。
黒部川流域の山腹崩壊は進んでおり、ダム・発電所・砂防堰堤等々が作られていますが災害に繰り返し見舞われて、その都度「復旧・復興」して来ましたが運ばれてくる土砂が河床を高くして、ダムを埋めてしまい湛水能力を無くしてしまいます。
「作ればそれでいい!」みたいな話ではなく、この先何万年もの時間を掛けて黒部がナダラカニなるまで人間は対応して行くことになるのでしょうか。
今回の豪雨被害を見ていると、この先の災害への備えについて人間の時間ではなく自然界の時間に合わせて考えてゆく空気が生まれてくれればと、黒部で生まれ育って被災して復旧作業にチョコッと当たって来た者として思うのですが。