阿曽原温泉小屋

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そもそもⅣ(敵を知り己を知らば百戦危うからず)

2020-03-06

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コロナのせいで、気楽に飲みに行けない。

色々書いていますが、私は登山者を批判したり不安を煽っているわけではありません。

登山って自分の実力に応じて、計画を立てて~コースを研究して~装備を準備して~歩いて楽しんで(苦行?)~無事下界に還って~美味しい酒を飲むまで。

(装備っていうけど、ロープを持っていれば何とかなるものではありませんから。ロープは正しい使い方をしないと!)

登山って普通の競技スポーツと違って、自分の体力・経験等に合わせたコース・ペースを決められるのが良いところかと。

自分の実力以上のコースに行くには、それに応じたトレーニング・知識の吸収が必要になってくるはず。

(警備隊の訓練等は、ある程度安全が担保されている場所でチャレンジして鍛えないと、実力も上がらないし本番で自信と余裕を持って事に当たる為には厳しい訓練してもらわないと!)

また以前歩いたコースでも、その当時と今現在の自分がどれだけ違いがあるのか?もしも、歳を重ねているようならば歩けた当時の様には歩けないのは自然な事ですよね。

要は「山を知り、自分を知る」ことに尽きるのでは!

みんなに山を楽しんでもらうための、救助体制・登山道整備・テント場山小屋等の宿泊施設充実等のサポートは出来ても歩くのは一人一人の登山者です!(この手の話しは、書き出すとキリがない・・・)

本件は大事に至らず幸いたったものの、高齢の男性リーダー以外はそれほど登山経験が無かったのでは?他のメンバーがコースを研究していてくれたら、引き返す意見も出せていたとしたら避けられた事案ではなかったかと思います。

警備隊員にあっては仕事とはいえ雨の中現場に赴き、一晩中付き添って・処置して・励まして長い夜だったことでしょう。

でも、心の底からの「ありがとう」を言ってもらえたのでは?「いい仕事した」って遣り甲斐を感じて、厳しい訓練に耐えてもらわねば!

そもそもⅢ(引き返す勇気)

2020-03-05

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昨日の雪倉岳~鉢ヶ岳(稜線には雪が付いていないってことは!)

翌朝天候が回復して、消防防災ヘリ「とやま」が出動して遭難者はピックアップされて無事病院に収容されたのです。

現場出動した警備隊員によれば、テント内でビバーク中に「錯乱」とまでは行かないけれど低体温症の症状が出ていたそうです。

この遭難事故についても、先の真砂岳の大量遭難とリンクする「状況判断の甘さ」があったと言われても仕方ありません。(「トムラウシ遭難」・白馬「小蓮華岳遭難」然りです)

そもそも荒天予報が出されており、どのような状態になるのか?どんな危険が出て来るのか?予測して行動を決めるのがリーダーの役目であり、周りの者も意見を出して考えるのがパーティーのはず。 (事実当日は、お客さんからのキャンセル祭り状態でした)

そして先行パーティーが「常識的には引き返しているのでは」と言わしめる、沢の増水を目の当たりにしても渡渉しようとした判断は大きな間違いと言わざるを得ないでしょう。

参照:なんじゃこりゃ?には、ご注意を!

小柄な高齢女性を増水した沢を渡渉させられるのか?自分達の実力が分かっていないのに突っ込んでいるのでは???

全体のコース概要が頭に入っていれば、黒部別山谷までの所要時間を考えれば阿曽原まで明るいうちに届くとは考えられず、引き返せば十分最終バスにも間に合っていたでしょう。

『引き返す勇気』よく聞く言葉ではないでしょうか?

山は、一度や二度そのコースを歩いたからといってベテランって訳にはゆきません。

時期・時間帯・天候・整備状況・消耗度合い等々で、難易度が大きく違ってくるのは私が言わなくても分かるはずです。

そもそもⅡ

2020-03-04

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阿曽原谷の滝の吹き出し。(この程度から、黒部別山谷の渡渉は厳しくなっているはず)

午後4時過ぎだったと思いますが、仙人谷ダムから当該パーティーの人間から

「黒部別山谷で、同行の女性が増水した沢の渡渉に失敗して流されたが直ぐ下流で掴まえて岸に上げた」

「しかし衣類が濡れてしまい、着替えをさせたけど歩けないので現場で他の同行者と待機させている」

との救助要請が入りました。

未だに雨はやや強めに降っているし、雲は厚く徐々に暗くなってきています。

今なら室堂からアルペンルートを使って黒部ダムまで出て、下の廊下を現場に向かうほうが早くて安全?だと判断して室堂警備派出所の小隊長に架電して出動してもらいことにして、阿曽原からは通報者を迎えに行ってもらうことに。

当たり前のことですが、事前に注意報を出していたおかげで直ぐに出動出来ました。

(最近なるほどと感心させられた言葉 「空振りは良いけど、見逃しはダメ!」 事案に当たっては、大きく捉えて取り合えずアクション!って意味だと思うけど、危機管理に当たっての金言ですよね)

さすがに警備隊員、真っ暗な中でも黒部ダムから黒部別山谷までコースタイムの半分足らずで現着します。

遭難者の女性は、低体温症の症状が出ており、暗く足元が悪い中を遭難者を担いで!加えて消耗しているであろう付き添い人を連れて黒部ダムに向かうより、現場でテントを張って保温に努めて天候回復予報の翌朝にヘリコプターで迎えに来てもらう方針に。

そもそも!

2020-03-03

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二代目「とやま」ホイスト訓練中(羽が一枚増えて)

先のページで、「そもそも天候悪化の予報」って書きましたが、昨シーズンの下の廊下でこんな遭難事例がありました。2019/10/9に簡単に書いてます

その日は昼前から強い雨が降る予報で、自発的なキャンセルが殆どでしたが、ネットでも注意喚起して連絡のない方には小屋から電話を掛けて「無理して向かわないように」との要請をして、ほとんどがキャンセルとなりましたが、一部の方は「途中まで向かって悪い様なら引き返す」との返事の方もおられました。 

他に携帯電話が通じない6・7人パーティーがありましたが、何度か架電するものの繋がらず・・・。

天気予報通りに昼前後に強い雨が降って、若干降りが弱まり出した午後3時過ぎに早くも朝一の扇沢発のバスで入山して下の廊下を通り抜けて来た足の速いお客さんが到着されました。

黒部別山谷 等、増水したら危険になる箇所について聞いてみると、黒部別山谷は増水し始めていたけど自分達が渡渉した時にはギリギリ渡れたとのこと。

ただ、その手前で追い越した6・7人パーティーの中に高齢の方が何人かいて、小柄な高齢の女性が居たのだけど・・・。

朝一のバスに乗っていなかったパーティーだから黒部ダムで泊まっていた人かと、だとすればかなり遅いペースで・・・自分達が黒部別山谷を渡渉した後に振り返っても見えなかったし、直後から雨が強くなって増水したはずで、あのパーティーでは渡渉が出来ないだろうから常識的に考えれば引き返していると思うけど。

「エーッ!」イヤーな予感が、詰めている警備隊員に伝えると共に「黒部別山谷」は上市警察署管轄になるし実際に黒部ダムからの方が近く増水・登山道の危険度も断然ダム側からの方が安全なので、立山室堂山岳警備派出所にも注意報を入れておきました。

雪の付き方!Ⅲ

2020-03-02

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室堂から剣御前~別山(中央下部平地は雷鳥沢キャンプ場)

事故の詳細は、立山中高年大量遭難事故を参考にしていただければと思いますが、真砂岳の稜線で倒れていた8名全員死亡という大惨事となってしまったのでした。

私なりに、???と感じたことが沢山ありました。

なぜ、全員が吹きっさらしの尾根で倒れていたのか???(知識不足)

少し黒部側の尾根下に移動すれば風も弱かっただろうし、そこには這い松があるから潜り込めば強風を避けることが出来たはず???(経験不足)

装備があまりにも貧弱! ビニール合羽って、いくら何でも???(秋山は寒気が入ると冬山に豹変します)

ザックから衣類を取り出して重ね着している様にも見えなかったし???(意識低下・パニック?)

時間は沢山あったはず!もっと出来ることが有ったんじゃ???(消耗して冷静な判断が・・・)

等々ありますが、普段からどうしてこんな雪の付き方をするのだろうと普段から理由を考えていればこんな結果にならなかったのでは?先の写真参照(真砂岳の稜線には雪が有りません)

そして、助けを求めに行った方は元気な方だったにしても二人はゴアテックスを着ていた事実。(ビニール合羽は実際バリバリになっていたし、上着にファスナーも無く寒気は吹き込んでいたはず)

そもそも天候悪化の予報が出ていて、「一の越」到着時点で雪が降り出していたところで引き返していれば・・・「もしも」とか、今更言ってもなのですが非常に残念な遭難事故でした。

雪の付き方!Ⅱ

2020-03-01

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室堂平で旋回する県警ヘリ「つるぎ」

まだ続くの続き。

一刻の猶予もありません、「早く早く」反応は弱くても生きています。 同じ仮死状態の人がもう一人確認されていましたが、残念ながら他の6人は全く反応が有りません。

ヘリコプターに収容できる人数は限られているので、反応のあった2名だけを機内に収容して病院に向かってもらうことに。

ヘリコプターが、二人を乗せて飛び立って直ぐに無線連絡が入ります。 

「剣御前小屋に、同じパーティーの2人が収容されている。確認に走れ!」

現場保存に一名の隊員を残し、2名で凍った稜線をアイゼン付けずに走り出します。(蒼氷になる場所は殆ど無く、強風に曝されたルートは山全体が固まっている感じ)

別山の頂上に着くと、前日の新雪を被った剱岳がピーカンの日差しに照らされる姿をカメラに収めようと、三脚が立ち並びカメラをのぞき込む人が大勢いました。(雪のある時期の別山は、遠回りでも必ず頂上廻りのルートを!)

我々に気付いたカメラマンが

「夜明け前に場所取りに来たら、凍えて弱った二人の男性が岩の影にうずくまってビバークしていて、剣御前小屋にみんなで収容しておきました」

みたいなことを教えてくれました。(我々は走って来て、息も絶え絶えなのですが警備隊のユニフォームを羽織っている以上は冷静に聴く振りをしないと・・・なので記憶が曖昧で、みたいなことなのです)

小屋に着くと一目で遭難パーティーと分かる二人が、玄関に座り込んでいて消耗はしていますが受け答えはしっかりしています。

昨日朝から、室堂~一の越~立山と縦走して来て、午後になって真砂岳の肩まで来たところで猛吹雪になって進退窮まって、元気な二人が近くの内蔵助山荘に助けを求めに先行したが方向を見失ってビバークして早朝にカメラマンに助けられたとのことでした。

二人は確かに頑健に見えたのですが妙に納得させられたのは、あの頃から一般に普及してきた「ゴアテックス」の雨具を着ていたのです。

もう少し続くはず・・・って、コロナ騒ぎで何処へも行けないし~・・・。

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