阿曽原温泉小屋

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こんなところで!Ⅴ

2020-02-14

写真

大窓の頭~池の平山~小窓尾根

続き。

この時に強く思ったのが、同じ白い雪面でも「風の通り道と風の弱い場所では大違い」と改めて思い知らされました。

その場所の雪の積もり方によってはパンパンに締まった雪面にもなるし、吹き溜まりの場所はゆるく積もって不安定になっている可能性があるということです。

今回の現場では、「六字塚」から下部の斜面は立つことが出来ないくらいの締まり雪!

剣山荘横から剣沢下流側にかけての斜面には、ゆるく積もった雪がたまってしまったのです。

結果論というか教訓として、積雪状況を頭に入れながら上部斜面が安定した場所を登り返すことが出来ていたら二人も亡くならずに済んだのでは・・・。登り易さ?安心できる夏と同じコース?硬い斜面を避けた???等と後の祭りなのですが・・・避けることが出来たのではないかと思ってしまいます。(そもそも天気予報で降雪予測は出来なかったのか?入山時は積雪前だったのでは、ベースの雪面の状態を見ていたのだろうか?少なくとも、上部に注意を払っていれば逃げられたのでは?)

雪崩の発生について、研究者の話を聞くと「斜面と雪がが有れば、どこで発生しても不思議ではない」との事ですが、吹き溜まりに積もる雪は風で雪面上を転がりながら運ばれるときに結晶が壊されて雪同士がくっきにくくなると聞いたことが有ります。(霜ザラメの発達等、他要因で発生することも!)

クロユリのコルから剣山荘裏側・一服劔手前斜面には残雪が遅くまで残ります。(なんで残るのか?)

富山平野側から吹き付ける季節風が、別山尾根を越えたところで吹き溜まりとなって大量の積雪を残してしまうのでしょう。

先に大日岳の巨大な雪庇の話をしましたが、尾根の風下側に発達した雪庇直下の雪面は吹き溜まりで柔らかかったとのことです。(一度、気温・雪温が上るまでは)

ちなみに立山黒部アルペンルートの 「雪の大谷」 には、4月中旬の開業当初は20mの雪壁が出来ますが、少し離れた室堂平には半分も積もりません。これは、雪が積もる際に雪面が平らになる様に積もるからだそうで、風が弱まる谷の中には大量の雪が残って風が強い吹きっさらしの場所には積雪が少なくなってしまうそうです。(尾根の風下も平原の谷を埋めるのも、風が弱まって溜まるのだから吹き溜まり)

雪のこと書き出したら、まとまんないし~っ・・・収拾がつかなくなってきた。だれか止めて~! 続く~っ。

(今夜から飲み会が・・・書く元気が残るのであろうか)

こんなところで!Ⅳ

2020-02-13

写真

二代目「とやま」の訓練

続き。

徐々に現れてくるジャケットやパンツの向きから頭部を割り出して、ダメとは思いつつも声を掛けながらシャベルを振るい頭の辺りはグローブで雪を掻き出します。

横向きに埋まっていた女性の蒼白の顔面を出してあげますが、グローブを介して顔面の硬直具合が手に伝わって来て・・・埋まりながら呼吸をしようとしていたのか?口元を少し開いて目を強くつむり少し苦しそうな表情に見えます。

頭を引き起こしますが呼吸・心拍共になく、持ち上げた頭部は妙に重くて・・・グローブを外して素手で頬を触り瞼を開けてみますが瞳孔は開いており、ただただ無慈悲に冷たさが手に伝わって来るばかりです。

被った目出帽の縁から、濡れた髪の毛がはみ出して額から頬にかけて張り付いていて・・・それがなんとも可哀想というか無力感に沈みそうになりますがモタモタしている暇はありません、ヘリコプターが飛べる天候の間に帰らないとエライことになります。

テキパキと本部に無線連絡しつつ遺体収納袋に遭難者に納めてロープで締め上げます。 締め上げる!って可哀そうですが、少し我慢してもらわないとワイヤーで吊りながら一時的に移動するので、収納袋自体の強度が心配なのでロープで荷重が分散される様にする必要があるし、収納袋の中で遭難者が偏ったり袋が緩むと危険なのです。

日没に向けて、薄暗くなるし気温は下がるし少し不安になりましたが・・・ヘリコプターが飛んで来てくれて、数回に分けて遭難者と我々をピックアップしてくれて一件落着したのでした。

続く。

こんなところで!Ⅲ

2020-02-12

写真

昨日はスキー日和でした。(雪って楽しいんだけど・・・)

続き。

デブリの厚さは2m前後で発生から時間も経っておらず、枝・岩・氷も殆んどないので割とスムーズに進められました。(枝・岩・氷などの硬いものが有るとゾンデが入らず、それを確認してからの捜索になり手間が)

捜索開始30分位、一人目の埋没者の上部5m余りの中央部で、隣の隊員が「アッ、ここかも?」声を上げます。

突き立てたままの反応が有るゾンデ棒を代わって突いてみると、1m余りの先端からは硬いは硬いのですが明らかに岩等のメチャ硬い物とは違う反応が伝わってきます。(死後硬直してはいるものの、ヤッケ等の着衣や身体そのものに若干の弾力が。比べてみれば分かるはずですが・・・普通は進んで体験したくはないですよね)

上部斜面の見張りを交替しながら、ゾンデ棒で埋まっている遭難者の身体の大きさを確認しながら周りから掘る者と身体の上を埋めている雪を除ける者に手分けして、頭部がどこを向いているのか解らないのでゾンデ棒で突き当ながら大まかな身体の向きを探りながら慎重ながらもガンガンと掘り進めます。

まだ続く。

※昨日は、いい一日でした!

昨日は急に思い立って、六年振りに「押し掛け助っ人」に行ってきたのですが、予想通りランチタイムは大混乱でした。

久し振りに顔を合わせた、京都からの御家族・お馴染みローカルさん・阿曽原に来てくれた方等々から笑顔で声を掛けていただいて・・・仕事は疲れましたが、皆さんの元気な笑顔も見れたし照れ臭いけど暖かい気持ちになれて・・・良い一日になりました。

(髪の毛が油煙で固まって帰ることになりましたが)

明日は晴天!(助っ人に)

2020-02-10

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晴天の立山

明日の休日は、晴天予報!富山のスキー場は、今シーズン一番の賑わいになるのでは? 

ということで、立山室堂の立山センターの賄いをしている「絹ちゃん」が牛岳スキー場で経営しているレストハウス「サンシャイン」に助っ人に行ってこようかと。(実は絹ちゃん、「所さんの日本ムラビト大賞」第一回グランプリ受賞者なのです)

休日のランチタイムは、盛りが多いので馴染みのローカルメンバーで大賑わい。

オープンキッチンの厨房内は三人程度しか入れず、フライパンを振る者・トンカツ揚げる者・食器洗う者・盛り付ける者・バナナジュース作る者・・・オーダー漏れ・オーダー違い・生ビールの樽の切り替え等々一人で何役もこなさなければ。

忙しい日の帰りには、あまりの炒め物の多さと揚げ物のフライヤーの油煙で髪の毛がポマードで固めたようになったことも。(換気ダクトが追い付かず・・・にしても)

昨秋の悪天続きで、阿曽原で売れ残った缶ビールを買い取ってもらった恩が有るので、明日は押しかけ助っ人頑張って来ねば!!

こんなところで!Ⅱ

2020-02-10

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赤谷山~大窓~池の平山~小窓尾根~剱岳(年末の馬場島)

続き。

全員アイゼンを装着して、クラストした斜面を現場に向かって下り始めます。少し歩きだすと、元通りの少し靴が潜る程度の雪に変わって、デブリの近くまで行くとアイゼンが邪魔になるくらいの柔らかさに変化してゆきました。

現場に近づくと、デブリの末端辺りに黒いヤッケのパンツと登山靴が見えています。向かいながらコールしても反応もなく、着いて直ぐにシャベル等で掘り出すものの遭難者は既に硬直が始まっています。

ガンガン掘り進めたいところですが遭難者に傷を付けない様な慎重さも大切、やっと顔面が出てきましたが中年の女性は呼吸の確認をするまでもなく、顔面蒼白・唇は蒼く・頬は冷たく硬く・瞼を固く閉じて・・・せめてもの救いは、顔面に傷もなく穏やかな表情だったことでした。

曇天で寒風に小雪が吹き付ける現場、重たい雰囲気の中で聞こえるのは風の音と我々の作業音だけ。

通報者は、埋まっている仲間が見えているのに現場を離れて通報に向かったの???

一緒に流されて生き残った通報者は、同じく中年女性だったので一人では無理だったのだろうか??? それはそれで、辛かっただろうな~って。

可哀そうというか・・・「何とかならなかったのか?」って遣り切れない気持ちも湧いてきますが、未だ寒くて寂しい思いをして雪の中で待っている遭難者を早く出してあげないと。

雪崩のデブリは、幅10m足らず・長さ25m余り・厚さもそれほどでもなさそうで雪崩の規模とすれば小さなものでした。

発生源は、剣山荘の裏の剣沢側の緩斜面で「這い松」が生い茂っている隣の斜面からです。

「エーッ、急斜面は他にいくらでもあるのに、あんな場所から出るなんて?」

出動メンバーは4人だったか?隊員一名は次の雪崩に備えて上部の見張りに残して、残りは横一列になってゾンデ棒で雪崩デブリを突きながら探します。

もう一回続く。

こんなところで!(先入観は持たずに)

2020-02-09

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剱岳~クロユリのコル~劔御前~大日岳(北陸道:流杉PAより)

今回の寒気はそれなりに強かったのですが、元々の積雪が少ない上に積もった積雪だから黒部の奥で大規模な「泡雪崩」は発生していないのでは???と予想はしているのですが・・・。 

予想外の事が起きるのが山の中です!

10月末?11月?源次郎尾根の登攀に向かったものの、悪天候で引き返してきたパーティーが剣沢内で発生した雪崩の直撃を受けて2人だったか?埋まってしまう遭難が発生しました。

曇天で風が少しあるものの視界が効いたので現場上空まで県警ヘリで向かい、上空からデブリを確認すると剣山荘の直下から 「武蔵谷」 出合いの少し上部まで雪崩れた跡がありました。(雪崩が発生するような急傾斜の印象は無かったのですが???)

デブリの近くは急傾斜地で着陸は出来ず、ホバーリングするにも新たな雪崩を誘発さる恐れが???なので少し離れますが剣沢警備派出所前の小さな広場にホイストで降下。

派出所前は風で吹き飛ばされたのか積雪はほとんど無く、沢筋は真っ白ですが風の通り道だからなのか?雪面に足を踏み出してもそれほど潜らずツボ足で快調に下り出して「六字塚」を過ぎた所で「ヒェーーッ、チョット待て待て!」見た目は同じ雪面なのですがパンパンに硬くなっていたのです。

(ちなみに六字塚は、剣沢キャンプ場下部の池塘の近くに「南無阿弥陀仏」で六字って聞いています)

それほどの急斜面でもないのですが、まともに立つことも出来ず足を滑らせればどこまで滑落するやら。

滑落停止訓練は受けているけど、強風が吹きつけてパンパンの滑らかな斜面で化繊のヤッケを着て滑り出して勢いが付けば・・・滑落停止なんて無理無理!慌ててピッケルを突き刺しながら戻ってアイゼンを付けます。

続く。

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