阿曽原温泉小屋

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現場対応は難しいのです。

2023-02-04

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真砂岳から左手前に下る「大走り」尾根(昨年5月)

先日宇奈月で開催された「国際山岳年プラス20シンポジュウムin黒部」でも、日本在住の外国人講師が「大雪山が語る北海道山岳地帯のインバウンドの可能性と課題」と題して講演しておられました。

その中で「こんなに素晴らしい景観の中に入って、素晴らしいパウダースノーを楽しめるのに、そんなにお金が掛からない!」みたいなことを話しておられました。

実際に今回事故が発生した 「白馬乗鞍」 だけでなく全国の名のあるスキーエリアには、日本人はもとより大勢の外国人スキーヤーが楽しみに来ており、更には外国の方が施設を運営・営業している例が有るのもニュースで報じられている通りです。

先にも書きましたが積雪は風向きや地形によって積もり方も違ってくるので、地元ガイド・山岳関係者等これまでの雪崩の発生状況を知って更には数日前から継続して山を観察出来ている人間の助言・注意喚起等を受けてから、入山するか?コース変更するか?の参考にしてもらうような体制作りしてゆくしかないのではないのでは?

富山県では「入山指導員」体制を作り、特に雪山シーズンでは立山室堂ターミナル・立山駅で常駐して登山届の受理しながら、積雪・コース状況等を随時伝えて注意喚起しています。

私もゴールデンウイークには応援に入っているのですが、今の状態では個人の趣味の活動に強制的に中止させることは出来ないので「昨日の新雪がまだ落ち着いていないから、○○方面は危険かも?」「昨夜の冷え込みで、○○斜面はバリバリにクラストしているはず」等のアドバイス・助言に留まっているのが現状です。

その際にメンバーの装備・経験等も併せて確認して不安を感じれば、コース変更等をお願いすることもあります。

もう少し続けます

いろいろと難しいのです

2023-02-04

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新雪を被った奥大日岳(頂上右肩のトレース付近が雪崩の発生源。稜線の裏側には大きな雪庇が発達します)

十年ほど前だったか?11月に真砂岳から雷鳥沢に向かう尾根「大走り」 付近でスキヤーが7名?が雪崩に巻き込まれた事故が発生しました。

ピーカンの晴天で絶好の山遊び日和だったのですが、前夜までに積もった新雪が不安定に残った斜面で表層雪崩が発生して発生源の下部で行動していた方々が巻き込まれたものでした。

新雪が積もる前の斜面状態・新雪の付き方(積もり方)等々を考え併せれば不安定な斜面で表層雪崩が発生するであろうことは予想できたのではないかと思うのですが・・・当日は、大勢のスキー・スノーボードを楽しむ方々が朝から行動していた様です。

室堂周辺の山小屋では注意喚起をしていたそうですが、あまりにも良い晴天で有ったのと大勢の人間が行動しているのを見れば、「大丈夫かなぁ~?」って考えてしまうのも仕方ないのかもしれません。

昨年もゴールデンウイークに「奥大日岳」 の斜面で発生した表層雪崩にスキーヤーが巻き込まれて足首の骨折だったか?事故が発生しています。

剣沢で雪崩で埋没してしまった登山者を救助に向かった際には、発生源が「剣山荘」 奥下流側の傾斜の緩い斜面から発生しているのを見て驚かされたこともあります。

基本的には斜面が有って雪がその上に積もっていれば「どこででも起こりうる」ものだそうですが、「風の通り道」「吹き溜まり・雪庇の発達」「積雪後の落ち着き方」等々の様々な要因が作用して、同じ真っ白な斜面でも雪崩が発生し易い斜面と割と安定している斜面が出て来ます。

もう少し続く(お陰様で手首の枕?付きのマウスパットに変えたら、肩こりが改善してきました)

突き詰めると、大きな問題なのです。

2023-02-03

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剱岳頂上~三の窓~小窓尾根

前々から問題になっていたのですが、バックカントリースキーヤーの遭難事故が発生する度に「規制が必要では?」「救助費用を負担させれば?」等々の意見が出て来ます。

ならば登山道ではない、沢登り・雪山登山・クライミング等も規制してゆかねばならなくなるのでは?との議論も出て来るし、そもそも登山道自体も危険度・整備状況によっても難易度は各人それぞれの実力によって違ってくる訳で、なによりも登山は大なり小なり困難を自分の力で乗り越えることが魅力だと考えるのですが???

ただ富山県には冬山遭難が相次いだために「富山県登山届出条例」 というものがあり「危険地区」「特別危険地区」が指定されて入山が規制されています。

条例制定時には「個人の挑戦を役所が規制しても良いのか」みたいな反対意見が強くあったようですが、虚偽申請して特別危険地区に入って剱岳剱尾根でドカ雪に見舞われ 死亡事故 を引き起こしたパーティが出てしまい制定反対意見は沈静化した経緯があります。

私も実際に、剱岳へ正月登山に来たパーティの一人が早月尾根2,600m付近?から雪崩に巻き込まれて「池ノ谷右俣」 へ転落した遭難者の救助に向かった事があります。

現場の尾根からザイルで下降したのですが、特別危険地区に指定されている谷底まで果てしなく続く雪壁を数ピッチ下った所で「申し訳ないけれど、これ以上は無理!」って引き返してきたことがあります。

続く

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