阿曽原温泉小屋

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お知らせ!

2020-07-10

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『剱人 剱に魅せられた男達<増補文庫版>』星野秀樹著 山と渓谷社刊 

昨日、山と渓谷社さんから届いた単行本「剱人」です。

同社の雑誌「山と渓谷」「ワンダーフォーゲル」で紹介された特集?連載?記事を再編・増補されたものが、7月13日発売になるそうです。

最終稿「番外編3 黒部の道直し」207P~224Pで、我々の活動が紹介されています。

秋に阿曽原小屋に泊まられた方には、夕食時に混雑時の協力をお願いをする際に雑誌「ワンダーフォーゲル」の見開き写真(グラビア?)を見てもらって、大仏が下の廊下で「道直し」で長い丸太でハシゴを作っている場面を紹介して

「下の廊下を歩いてこられた方々は、丸太ハシゴ・桟道を怖い思いで通って来られたはずです」

「そのハシゴ作っている時の写真なんですが、この大写しになっているのが阿曽原の番頭さんの大仏です。彼らの頑張りが無いと下の廊下が終わらないし、チョコチョコ情報を出せているのも道直しの最前線で汗を流してくれているからです」

「大仏は下の廊下の整備が終わると小屋が忙しくなるので、帰って来て皆さんの食べてるカレーを作ってくれています。 美味しいでしょ・・・!腹いっぱい食べて明日も元気に歩いて行ってくださーい!」(若干、脅しが入っていますが???)

みたいな説明を聴いて頂いているはずです。

著者の星野君が別の取材に来ていた時に、説明を聴いたお客さんが拍手喝采してくれたのを見て星野君が「ウルウル?」になっていたことが有りました。

自分の記事で、登山者に盛り上がってもらえたのが余程嬉しかったみたいでした。(星野秀樹は、素直な良い男なのです!)

そのワンダーフォーゲルの記事を、ブラッシュアップ?されたものが「剱人」に書かれています。(くすぐったく成る内容なのですが・・・)

他にも、山小屋仲間・大先輩・なじみのガイド等々盛り沢山の内容になっていますので、これから剱岳を目指す方も既に登った方も是非とも!

ひと時の晴れ間。

2020-07-09

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昨日の夕暮れ。

今日から、阿曽原に大仏と入ろうかと考えていたのですが・・・。

どんな仕事もそうですが、予定通りに行かないのを回すのがリダー?の役目!(阿曽原はリダーが、かなり適当なので・・・サブがしっかりしているのです!)

うまく回らないといっても、他の山小屋も「コロナ対策」「ヘリコプターの確保」「群発地震」等など阿曽原よりも大変な苦労を強いられている話が伝わって来ています。

頑張らねば!

突入!(目先のことではなく!)

2020-07-09

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突入時は、横坑直下まで濁流がゴーゴーと!

「新黒二発電所」の横坑真上辺りまで、藪斜面にザイルを張り込みながら関電職員をサポートしながらトラバースして行きます。

登山道が無く視界の効かない「藪漕ぎ」「雪山」は登りに使うとルートを探しながら歩ける場所を選べるのですが、下りでは方向を間違うととんでもない壁や巨岩に行き当たったときに登り返せないことが有ります。(何度も痛い目・怖い目に遭ってきました!登りは間違っても、ほぼ引き返すことが出来ます)

対岸の監視役メンバーに無線で連絡を取りますが、向こうからは藪が濃くて我々が見えない様で、ヘッドランプ照射・藪を揺する・最後は発煙筒を焚いて等しながら、こちらの進むルートを誘導してもらいます。

そんなことしなくても、河原まで下りやすいルートで降りて河原から横坑にアプローチすればと思われるかもしれませんが、この日もまだ水が引いておらず川幅一杯の濁流が横坑直下を勢いよく流れていて、間違って下ってしまい登り返せなくなったら致命傷なので慎重になります。(洪水時には横坑まで水位が上がり発電所内に流れ込んだ?)

何度も言いますが、若く元気には見えますがクライミング初心者でボディハーネスを付けたこともカラビナを使ったこともない様な人間を、いきなり獣エリアに連れて行く訳ですから慎重の上にも慎重になります。

先行してザイルを張り込んでルート工作して、初心者さんが頼れるようにしてアクシデントでそのザイルを手放しても落下しない様に別途ザイルを初心者さんのハーネスに繋いで、そのザイルを後方で確保しながら進むので時間が掛かりましたが、ミッションインポッシブル?のごとく無事に発電所への突入に成功して内部確認任務を終わらせることが出来たのでした。

先のページで書きましたが黒部は生きています。

黒部川流域の山腹崩壊は進んでおり、ダム・発電所・砂防堰堤等々が作られていますが災害に繰り返し見舞われて、その都度「復旧・復興」して来ましたが運ばれてくる土砂が河床を高くして、ダムを埋めてしまい湛水能力を無くしてしまいます。

「作ればそれでいい!」みたいな話ではなく、この先何万年もの時間を掛けて黒部がナダラカニなるまで人間は対応して行くことになるのでしょうか。

今回の豪雨被害を見ていると、この先の災害への備えについて人間の時間ではなく自然界の時間に合わせて考えてゆく空気が生まれてくれればと、黒部で生まれ育って被災して復旧作業にチョコッと当たって来た者として思うのですが。

やっぱり「黒部は生きています」

2020-07-08

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宇奈月温泉街の対岸が崩れていました。

先ほど宇奈月まで行って来たらビックリ! 温泉街対岸の山腹が、一部崩れていました。

かなりの急斜面が発生源ですが、樹木の生育具合を見れば数十年も安定していた山だったと想像できるのですが・・・。

写真では解り辛いですが、川床の一段上には宇奈月ダムに向かう自動車道路が走っていて、崩落した土砂は道路がトンネルになり始めた斜面を走って黒部川まで落ちてきています。(トンネル入り口になる、スノーシェッド部分の柱が並んでいるのが見えます)

規模としては大きなものではありませんが、少しでも上流側に逸れて崩れてきていたら道路は通行止めになっていたことでしょう。

宇奈月でこれなら・・・奥山にある不帰谷・東谷・小黒部谷なんかも崩れているのだろうか?

急峻な黒部の山は、我々のスケールでは測れないダイナミックな動きで形を変えているのだと思い知らされます。

降水量は被災地に比べると少なかったけど、流域が広く・急峻で・崩壊地が沢山ある黒部川ですが、人が住む下流域で被害が少ないのは治水・治山・ダム管理等々のお陰なのだと思うのですが?

今回の災害も、数十年前にあった熊本県内のダム建設計画を白紙撤回させなかったら・・・との話がワイドショーで出ていましたが・・・。

毎年の様に災害に見舞われてしまう現実を踏まえて、「一段高い所から、広く見て考えて」その地域その地域に合わせた災害対策を進めてもらいたいものです。

突入!(藪の下りは、慎重にルートを選ばねば)

2020-07-08

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出水が治まりつつある、先ほどの黒部川(山彦橋と新山彦橋)

現場に突っ込むのは、私・大仏・応援ガイド2名で若い関電社員2名を伴い6人で横坑に向かい、黒部川を挟んだ対岸のトロッコの線路から我々のルート取りが間違っていないか等、監視役として藪漕ぎ経験のあるバイトと「H副所長」達に受け持ってもらう段取りにしました。

当時はもちろんトロッコ列車は動いておらず、猫又駅・黒二発電所の復旧作業のためにチャーターヘリが宇奈月から毎日何度も人員・物資輸送していたのに便乗して向かったのです。

(猫又駅付近は送電線が二系統張られていて、ヘリコプターが少しでも触れれば即墜落です!「当たり前の事」って言ってしまえばそれまでなのですが、毎日何度も送電線を掻い潜りながらの離着陸を事故なく繰り返していたパイロットとクルー達は称賛に値すると個人的には思っています)

猫又駅前 に着陸してから前々ページの赤い鉄橋を渡りますが・・・天候回復してから日数がかなり経っていたはずですが、本流は川幅一杯に濁り水が勢いよく流れていて落ちれば何処まで流されてゆくやら・・・。

黒二発電所からは、導水管沿いに水槽まで歩道で高度を稼いで、その先は急な藪斜面をトラバース(横断)して行き「横坑」に向かって下れるルートを探しますが、真夏の標高500m付近の藪斜面は樹木の葉が開いて遠くを見通すことが出来ないのです。(ここら辺が、ゲレンデ登樊との大きな違い!)

我々だけならどんな事してでも突破出来るはずですが、その日初めて見る若者2人の経験・実力がどれだけあるのか???怪我をさせずに、連れて行き連れて帰るには・・・空中をザイルで降ろす様な事は出来ません。(降ろしてやれても、登り返せなくなり帰れません)

ここで、対岸の監視役の人達に助けてもらうことになったのでした。

突入!(九州北部水害、お見舞い申し上げます)

2020-07-06

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新黒二発電所は、地下に隠されて作られています。

写真は、猫又駅を欅平に向けてすぐ対岸に見える横坑ですが、奥には地下式の 「新黒二発電所」 が山をくり抜いて作られています。(黒四発電所と同じで、景観保全と雪崩の被害を避けるためです)

H7.7水害時に、洪水で一帯の電気設備が壊滅したため遠隔監視のカメラへの給電が止まり監視が出来なくなってしまったのです。

洪水時には本流の水位がかなり上がり、地下式なので湧水量も相当量あったはずで発電は洪水時には止めていたものの、設備が被害を受けていないか早急に確認する必要がありました。

しかし、発電所内を確認する術がないので対策の取り様もなく・・・。

通常の黒二発電所からの通路は洪水被害で使い物にならず、地下の水路から潜水夫がアプローチして発電所の入り口の鉄の扉?ゲート?を焼き切って突入するか?(焼き切った途端に流されるのでは? あまりにも危険すぎると中止に)

等々、検討されたようです。

当時、関西電力の協力会社の宇奈月支所の副所長をしておられた、前;朝日岳方面遭難救助隊長のHさんから連絡が入って

「新黒二発電所の横坑まで山腹の藪斜面からアプローチして、発電所内に突入して中の様子を見て来てくれないか?」

「あんたらだけで突入しても発電所の設備の事は分からないだろうから、その時に関電の社員を2人連れて行ってもらって確認させたいのだけれど、無事に連れて行って帰って来れるか?」

との依頼が来たのでした。

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