阿曽原温泉小屋

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突入!(藪の下りは、慎重にルートを選ばねば)

2020-07-08

写真

出水が治まりつつある、先ほどの黒部川(山彦橋と新山彦橋)

現場に突っ込むのは、私・大仏・応援ガイド2名で若い関電社員2名を伴い6人で横坑に向かい、黒部川を挟んだ対岸のトロッコの線路から我々のルート取りが間違っていないか等、監視役として藪漕ぎ経験のあるバイトと「H副所長」達に受け持ってもらう段取りにしました。

当時はもちろんトロッコ列車は動いておらず、猫又駅・黒二発電所の復旧作業のためにチャーターヘリが宇奈月から毎日何度も人員・物資輸送していたのに便乗して向かったのです。

(猫又駅付近は送電線が二系統張られていて、ヘリコプターが少しでも触れれば即墜落です!「当たり前の事」って言ってしまえばそれまでなのですが、毎日何度も送電線を掻い潜りながらの離着陸を事故なく繰り返していたパイロットとクルー達は称賛に値すると個人的には思っています)

猫又駅前 に着陸してから前々ページの赤い鉄橋を渡りますが・・・天候回復してから日数がかなり経っていたはずですが、本流は川幅一杯に濁り水が勢いよく流れていて落ちれば何処まで流されてゆくやら・・・。

黒二発電所からは、導水管沿いに水槽まで歩道で高度を稼いで、その先は急な藪斜面をトラバース(横断)して行き「横坑」に向かって下れるルートを探しますが、真夏の標高500m付近の藪斜面は樹木の葉が開いて遠くを見通すことが出来ないのです。(ここら辺が、ゲレンデ登樊との大きな違い!)

我々だけならどんな事してでも突破出来るはずですが、その日初めて見る若者2人の経験・実力がどれだけあるのか???怪我をさせずに、連れて行き連れて帰るには・・・空中をザイルで降ろす様な事は出来ません。(降ろしてやれても、登り返せなくなり帰れません)

ここで、対岸の監視役の人達に助けてもらうことになったのでした。

突入!(九州北部水害、お見舞い申し上げます)

2020-07-06

写真

新黒二発電所は、地下に隠されて作られています。

写真は、猫又駅を欅平に向けてすぐ対岸に見える横坑ですが、奥には地下式の 「新黒二発電所」 が山をくり抜いて作られています。(黒四発電所と同じで、景観保全と雪崩の被害を避けるためです)

H7.7水害時に、洪水で一帯の電気設備が壊滅したため遠隔監視のカメラへの給電が止まり監視が出来なくなってしまったのです。

洪水時には本流の水位がかなり上がり、地下式なので湧水量も相当量あったはずで発電は洪水時には止めていたものの、設備が被害を受けていないか早急に確認する必要がありました。

しかし、発電所内を確認する術がないので対策の取り様もなく・・・。

通常の黒二発電所からの通路は洪水被害で使い物にならず、地下の水路から潜水夫がアプローチして発電所の入り口の鉄の扉?ゲート?を焼き切って突入するか?(焼き切った途端に流されるのでは? あまりにも危険すぎると中止に)

等々、検討されたようです。

当時、関西電力の協力会社の宇奈月支所の副所長をしておられた、前;朝日岳方面遭難救助隊長のHさんから連絡が入って

「新黒二発電所の横坑まで山腹の藪斜面からアプローチして、発電所内に突入して中の様子を見て来てくれないか?」

「あんたらだけで突入しても発電所の設備の事は分からないだろうから、その時に関電の社員を2人連れて行ってもらって確認させたいのだけれど、無事に連れて行って帰って来れるか?」

との依頼が来たのでした。

突入!(「球磨川流域水害」お見舞い申し上げます)

2020-07-05

写真

右側の施設が「黒二発電所」、左側から猫又谷の出合い、河原奥に合宿所・プラント等

球磨川流域の洪水被害、お見舞い申し上げます。

今までもH7年7月に、黒部川で発生した洪水被害の事をお伝えしてきました。

私達は、その辺りから災害復旧の応援で山小屋運営以外の作業を頼まれる様になったのですが、H7年7月水害の時には特に黒部川中流域の被害が甚大で、トロッコ列車は線路はズタズタになり駅・ポイント・送電施設等にも大きな被害を受けてしまい翌夏まで運行が出来なくなったのです。 (ちなみに、この撮影ポイントのより約100m宇奈月側の線路法面が濁流で洗堀(崩落)、線路下の土砂が無くなってレールとレールの間に落とし穴?みたいな深い穴が出来ていました)

写真の 猫又付近 は、左側からの流水が見えているのが猫又谷です。 この沢の奥で、山腹崩壊が発生して大量の土石流が猫又谷を流れ下ったのでした。(祖父谷の地滑りの様に堰止湖が出来ず、一気に大量の土砂と濁流が本流まで向かったようです)

元々洪水状態だった本流に、猫又谷からの土石流が合流ぶつかり盛り上がる形で溢れ出して付近にある発電所・合宿所・トロッコ列車の駅・変電所等々を濁流が飲み込み一帯を壊滅させて、合宿所の勤務員はヘリコプターで救助されたのでした。(後日、氾濫時の写真を猫又合宿所で見ましたが、言葉で表せないくらいの「濁流のウネリの高さ」で、人間の無力さを思い知らされました)

我々が沿線の状況確認の為に、天候が回復して半月ほど経ってから猫又を訪れた時には、いまだに河幅いっぱいに濁流が流れており、写真中央に見える赤い鉄橋には巨木が引っ掛かっていたりで被害の大きさに唖然とさせられたのでした。(山から湧水が引かなかった?長期間黒部川の水が引きませんでした)

営業方針発表は、もう少しお待ちください。

2020-07-04

写真

非売品!「ありがとうございました」

「Finetrack」様より、同社で製作された非売品のマスクを送っていただきました。

添えられた文書には、

山小屋は、登山者の宿泊や憩いの施設であり、安全登山のライフラインを担う山の守り手です。山を安全に遊ぶために仕事をしている点、山小屋を営む皆様も私たちメーカーも、想いは一緒であると感じると同時に、皆様に畏敬の念を抱いております。

と書かれてありました。

先の「MOUNT BELL」さんからのフェースガードの提供しかり

「山を楽しんでもらうために、自分達が今出来ること!」

山に関係するもの同士、一緒に頑張って行かねばと思う次第です。

阿曽原温泉小屋は、未だ今シーズンの宿泊営業をどうするか判断に迷っており、皆様には御心配をお掛けしております。(登山道・キャンプ場は、利用できる様にする予定です)

梅雨明けを目途に小屋建てをして、9月位からの縮小営業を目指していたところでしたが・・・糸魚川ホンキートンク「ZIP」へ 「ぐでんぐでん」 しに行った罰が当たったのか?一晩で感染者数が増加するし、隣町で感染者が出てるし・・・このまま感染者数が増え続ける様であれば考え直さねばならなくなるかも・・・。

小屋の利用者の方々に感染者を出さないことは勿論ですが、万が一にでも小屋で発生してしまうと我々スタッフも濃厚接触者となってしまい相当日数の隔離処置を覚悟しなければなりません。

代わりに小屋の切り盛り出来る人間は何処にもいませんから、そうなるとキャンプ場の管理すら出来なくなるのでは???かえって黒部を利用し辛くなるのでは? 

小屋締め直前に、そんな事態になってしまえば雪が降る前に小屋の解体が出来るのだろうか?

等々、次々と考えてしまい正直悩んでいる次第です。

いつもの自分なら、「山を預かる者の務め!」って強行突破というか前に出るのですが・・・他人に、痛い目・迷惑が!かもと思うと利用を控えてもらうのも務めなのかもって気もしています。(山は逃げないから無理するな!って言っているし・・・去シーズンの死亡事故の多発とかも考えると対応が出来るのか?)

今シーズンの阿曽原温泉小屋の営業方針について、今しばらく発表をお待ちくださいませ。

雪渓歩きの落とし穴!Ⅵ

2020-07-04

写真

不安定になり始めた剣沢雪渓!見れば分かるのだから迂回すればいいのですが?

先のページで雪渓はそれぞれ違う話を書きましたが、残雪の多い時期のビッシリと埋まって安定した雪渓は、夏道に戻るポイントを見逃してしまうことがあります。

○安定した雪渓は歩き易くて、周りを見ず足元だけ見て歩いていしまう。

○そもそも、雪の上を歩くのが怖くて次の足を置く場所しか見えていない。

等の理由からですが、劒沢~仙人池~阿曽原のコースに関しては各山小屋に確認していただければ、最新の雪渓の状態を把握して「何処に注意して歩けばよいのか」を通行する方に伝える様にしております。(時には、略図を渡している場合も)

しかしコース全体の概念は、歩かれる本人・グループであれば最低リーダーが把握してから入山していただくことが大切ですが、最悪知らずに入山しても常に周りに気を配って確認しながら歩いて頂ければ迷う様なことはないのですが・・・。

更に迷った方は、雪渓の勾配のキツさ・藪に行き当たる・登山道が何時まで経っても見つからない等などで、途中で「間違ったかも!」と気付いている方が多いと思うのですが・・・。

○怖くて下れない!  ○引き返すのは大変!  ○行けば何とかなる!(現実逃避)  

この様な自分の都合?みたいな理由で「ハマって」しまう方がほとんどではないかと。

何度も書いてきていますが事後に検証してみると、単独登山者・リーダー不在パーティーがトラブっているのは明白なのではないかと思っています。

雪渓歩きの落とし穴!Ⅴ(その場その場で、違うのです)

2020-07-02

写真

中央上部の雪渓から右上に伸びている枝沢(雪渓)を登ってしまったのでした。

まとめ!

今回の遭難も、雪渓を登って行ってのルート間違いでしたが、他にも仙人池ヒュッテまで30分の場所で枝沢に登って行って登山道が無くなったけど・・・「小屋の発電機の音が聞こえる」って、こんな迷いパーティーが出たこともあります。

リンクの地形図中央に、破線がくびれているポイントがありますが、当時は正面の枝沢にも残雪があって、道をくびれずに枝沢の残雪を真っ直ぐ登ってしまったのでした。

(阿曽原で泊まって剣沢に向かったお客さんだったのですが、私達が真砂沢までの登山道補修に翌日向かうため小屋の片づけを済ませて夕方仙人池に着いたところで一緒になって???かなり昔の話しですが、縁が出来たのか?それ以来その兵庫のお客さんは度々阿曽原に来てくれています)

これだけ間違いがあるのならば、白馬岳の大雪渓の様に紅ガラを撒いてルートの目印にすればと考える人もいるでしょう。

仙人谷の雪渓は狭い谷筋に残るのですが、冬場の降雪量・雪崩の規模・夏の気温や雨量等によって、融雪のスピード・残雪ブロックの形状等に大きな違いが出て来てしまいます。(標高の低い場所の残雪は、気温が高くなるのに雪渓で空気が冷やされてガスが湧きやすく迷いやすい?)

下手に目印を固定してしまうと、かえって危険な場所に誘導してしまうこともあるのです。

なので、大雪渓と同じ様な対応は出来ないのでチョコチョコと様子を見に行って、その都度目印を付けに行ったり状態が非常に悪くなった時には現場に一日中張り付いて誘導するために阿曽原から毎日通ったこともあります。

先に紹介しましたが、10月初旬まで残った枝沢の雪渓の崩落に巻き込まれスノーブロックに埋まった登山者を救助したこともあります。

すみません!これから糸魚川に飲みに行けねばならないので・・・明日、元気なら続きを書きます。

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