泥を被って汗を流さねば。
2019-09-08
続くが続くの続き。
冷蔵保存?しておいたつもりの遺体は水に浸かってしまい、温度上昇と共に痛みが進んで来ており早く下してあげないと・・・ヘリで収容してもらえないとなると背中に担いで下山する事になり、そうなると支援者の方々には多分無理だろうから「担ぐのはN隊員と二人になるかも!」って思うと流石に「マジかよ」ってなります。
何としてもヘリに連れて行ってもらわねば!
水切りもソコソコに、遺体を収納袋ごと柔軟体操の前屈の様に二つに折り曲げてコンパクトになってもらい、背負い子に括り付けて池の平小屋に向けて歩き出します。
途中まではN隊員と交代で慎重に下っていたのですが、だんだんガスが降りて来ると同時にヘリコプターが池の平小屋に到着する時間を無線で伝えて来ます。
最後は、ガスの降下と競争しながらの下りの担ぎです。ガスの切れ間からは、ヘリがホバーリングして我々が仮設ヘリポートまで降りて来るのを待ってくれているのが見えます。
フィニッシュは交代する暇など有りません、ゴアテックスの合羽ズボンがずり下がって破けようが(泣)、自分の下半身が色の付いた液(汁)まみれになろうが構っていられません。
もし今のチャンスを逃せば、この何倍もの苦難の担ぎが有るのですから汗だくの速足で下って、なんとかヘリコプターに収容してもらう事が出来たのでした。
後日、ご遺族の方から丁寧な心の底からの「ありがとう」を頂きました。(これを言ってもらえるから、頑張って来たのかも)
実はこの遭難者の支援者の方々には、「警察(国家権力)が大嫌い」な方々が混ざっていて「警察は警棒で叩きに来る存在!」と思っている人達がいたのです。
正月の遭難発生時にも、警察署に詰めかけて来て我々が捜索で小窓のコルでテントで一週間猛吹雪に閉じ込められて、命からがら下山して捜索を中止した際にも「もっと続けろ」と強く食い下がっていたとのこと。(俺達が死んでもいいんかい!)
遺体収容時に同行していた支援者も、我々の作業を探るるような微妙な空気の中での収容作業でしたが、我々は今までのいきさつには関係なく、目の前の遭難者を早く確実に家族の元に還すために、今ある装備・人員で目イッパイのことをするだけです。
色眼鏡で見ていたであろう?支援者から、我々が汗と液にまみれて合羽もズタボロで担ぐ姿を、ご遺族に報告されていた様です。
他人の為に泥を被っていれば、主義・主張・立場等を越えて信頼してもらえる!
って、思った事案だったかな~。
「そういう事案に遭遇しない」って思っている方は、目の前に目を背けたり・誰かやるだろうって遣り過していませんか?(一歩踏み出す勇気を)
裏返せば「それは我々の仕事なのか?って解った様なな理屈を並べて、少しも泥を被らない・被りたがらない、人の為に汗を流さない人間は・・・」残念に思えてしまうのは小屋主だけでしょうか?(すみません、偉そうな事言って。「自分に出来る事をしてあげたら?」ってことですから)
にしても、奴と出動すると何時も・・・なんだかな~。
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