阿曽原温泉小屋

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スピード命で帰ります!(観察して想像しましょ)

2019-08-05

写真

前ページの近景。ブリッジの中央部が崩落して両岸に橋脚部分の残雪が残ります。

続きが続くの続き?

(現場の写真が無かったので取りあえず折尾谷の残雪を載せましたが、高さも残雪量も勾配も比べ物にならない別物ですが、中央部分が無くなった状態は、前々ページの遠景と比べてもらえるかと)

暫く様子を見て、落ち着いた様なので再度埋めているブロックに向いますが、崩れたばかりのブロックが動き出さないか?慎重に近づきます。(重い氷に挟まれて、へし折れた遭難者の膝が・・・)

上部でズルッとブロックが動き、ビクッと立ち止まらせられますがアプローチ。

幸い遭難者の周りのブロックの状態は変わっておらず、ドラム缶ブロックの氷切りを再開して押して動かせる大きさになったところで滑るブロックを足場に全身の力を込めて二人で押し退けます。

その後は、屑ブロックを除けて遭難者を引っ張り出して(膝に気を付けながら!)谷の下方の安定した場所まで搬送(膝に気を付けながら!)無線で連携済みの初代県警ヘリ「つるぎ」に引き継いで一件落着なのでした。

走って現場に向かい~ほじくって~引っ張り出して~引き継ぎ!単純な救助だったのですが、「緊張感」だけで言えば五指に入る現場でした。

例年ならば、現場の雪渓は8月末には崩壊しながら無くなってしまうのです。しかしあの年は豪雪で秋まで残ってしまい、更にはその量の多さから雪渓の高さが高いまま残ってしまったので当然崩壊したブロックの量も多くなってしまいました。

当日は、雪渓中央がゆがんで広く窪んで、そこに真っ暗な穴が見えていたそうで、他の人達は異常を感じて雪渓を下って沢の中に降りて迂回して、対岸の雪渓に登り返して夏道に取付いていたそうです。

遭難された方は、周りの人が「危ないですよ!」って声を掛けていたのに、雪渓上に残る登山者の踏み跡通りにトラバースして崩壊に巻き込まれたのでした。

地形・残雪量・季節・気温・トンネルの大きさ・崩壊方向等々、簡単にに雪渓を論じる事は出来ませんが崩壊する時には、ほとんど新しいクラック・窪み・穴等の前兆が視られる筈です。(雪渓が安定していれば、これほど歩き易い場所は無いのですが) 

変化を危険と察知する事は、それほど難しいことではないのですが・・・「うん?」と思ったら、観察して想像して下さい!そして迂回する等の臨機応変の対応をしてください。(問題です!なんでクレバスが出来るのでしょうか?)

踏み跡が有るからって盲信して進まずに、周りの状況・他の人の声を聴いていてもらえれば事故には遭わずに済んだのですが・・・。

当日は、小屋の宿泊が60人位の忙しい日だったので「スピード命」小屋まで駆け下りると、現場を通り掛かって救助活動を見ていた登山者から次々と労って頂いて(手を合わせて拝まれても・・・私は大仏では無いんですけど)ちょっと照れながら旨い酒を頂けた夜に成ったのを覚えています。

スピード命だけど・・・!

2019-08-04

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折尾谷の崩壊前のスノーブリッジの遠景(最上部を横断中に崩れたと想像してみて)

続き!

埋まっている場所の真上のスノーブリッジは崩落した後なので真上はクリアなのですが、少し上流側から先は谷を埋め尽くしたスノーブリッジが続いて中央下部に空いたトンネルからは白い冷気が重い静寂の中をユラユラと流れ出て来ています。

遭難者を引っ張り出そうとしますが、ブロックに身体を押し潰されている状態!

上に乗ったドラム缶クラスのブロックは、ピッケルを打ち込もうが全身を使って押せどもビクともしません。

この時期の雪渓は硬いだろうと、小屋から持参して来た雑木切断用の目の粗いノコギリでブロックを切断したり、切れ込みを作ってピッケルを打ち込んで叩き割ったりしながら、痛そうな下腿に干渉しない様に徐々に小さくしてゆきました。

突然「バフッ」我々の上方の雪渓にクラックの入った音がしました。二人で目と目を合わせたと同時に「ヒェー」下方の残雪のしっかりした脇の部分にそれぞれ飛び逃げます。

その直後に「バッホーン」大きな崩壊音と共に雪渓が崩落して、その煽りで氷粒・水を伴った爆風?に吹かれて二人とも髪の毛は逆立って全身クールダウン???なーんて・・・そんな余裕など無くて、砕けたブロックがずり下がって来て作業していた場所の直前で止まってくれて、実は肝を潰していたのでした。

その後もしばらくクラックの入る音が次々と・・・「スピード命」ですが落ち着くまでは気持ち悪くて近づけません。

続きが続く!

スピード命です!

2019-08-02

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雪渓崩壊時の、救助活動が書いてあります。

平成8年の10月初旬、仙人温泉から旧道を進んだ第二雪渓で登山者一名が横断中に崩壊に巻き込まれた事案が有りました。

あの年の冬は豪雪で残雪量も多く、「下の廊下」の白竜峡から先は10月末まで残雪で埋まったまま開通しない年でした。

丁度小屋に居合わせた警備隊OBの稲葉ガイドと二人、雪に埋まったままならば早く助けなければ「凍えてしまう」と一気に阿曽原から現場に駆け上りました。

現場は幅広く高く残っていた雪渓が、両岸の橋脚部分を高く残して中央部分は谷底まで約7m位崩落しており、遭難者はぐったりしているものの呼吸はしている様ですが、身体の半分以上が折り重なったスノーブロックに埋まって身動き出来ないままです。

当たり前の事ですけど、そんな危険な場所には誰も近づけず手つかずな状態???

間近で見る崩壊直後の迫力と破断面の綺麗な氷に、一瞬見とれてしましたが直ぐに冷静さを取り戻してアプローチ方法・次の崩壊は大丈夫か等々方針を検討、決まってしまえば現場を重ねた仲、テキパキと侵入準備にかかります。

雪渓は本流出合い側の下流から順番に崩壊して来ており、少し下った橋脚部分の低い場所から谷に降りてスノーブロック(ほぼアイスブロック)の上に登ります。

10月まで残った雪渓の崩壊屑は、大きなものは畳二枚位の広さで厚さは1m余りも有って氷塊となって積み重なり、崩れたばかりなので安定しておらず自然とズリ下がるのを避けたり蹴り押したりしながら滑るアイスブロック上を慎重に進みます。(大きく硬い氷の重さを想像して下さい・・・挟まれると痛いで済まないかも)

遭難者の近くに着くと雪の硬さが幸いしてか、ドラム缶位のブロックとブロックの隙間に挟まる様に埋まっていて息も絶え絶えと言うか息は弱く・・・「エッ・エ~ッ?」二度見してしまいました。ドラム缶ブロックの隙間から見える下腿部は、片足の膝から先が外側に不自然な角度で折れ曲がっていて、絶対痛いはずなのですが・・・返事も虚ろな遭難者なのでした。 

これってヤバイんじゃね???発生から二時間ほど経っており低体温症も心配。もたもたしていられませんアクセル全開ブッ飛ばします!

続く!

ファスナーのトラブルに。

2019-08-02

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シリコーンスプレー!結構使えます。

先日、登山靴のソールの剥がれに結束バンドをの話を書きました。

トラブルとして時々あるのが、スパッツのファスナーやストックのジョイント部の固着トラブルです。

小屋にはシリコーンスプレーを用意してありますので、トラブルの際には遠慮なく申し出て下さい。(ほとんどの場合解消できますし、オイル系と違いベタ付きにくいです)

安いモノですし自宅に用意されておいて、入山前のギアをチェツクの際に使ったり他にも使い道がイロイロあるはずです。(愛車ハイエースバンのシートベルトのすべりの悪さの解消に使ったり)

薄紫色に???

2019-08-01

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空気全体が染められた様でした。(小屋の対岸)

昨日の夕方は、夕立こそ降りませんでしたが「重たい空気」みたいな・・・山にはガスが掛って視界も悪かったのです。ちなみに、仙人池は、その時間帯はガスの中だったそうです。

夕食時に、窓の白色のアクリル板が段々赤色に???窓を開けてみたら、空気全体が薄紫色みたいな感じに、河原の石や水はオレンジ色がかっていて。 (スマホの写真でうまく取れていませんが)

ここまで不思議な空間は、28年間で初めてだったかも!

※お願い!

 当小屋は、午後九時消灯になっております。連日消灯前後に電話が掛かって来ており、宿泊のお客様の迷惑になっているのではないかと・・・。

何処の山小屋も同じですが、早出のお客様がおられます。(昨夜も、三人だけの宿泊でしたが仙人池に向われる方は早めに寝ておられました。ちなみに二人は超リピーター、一人は名古屋のイベントに来てくれた人でした) 

特にオンボロな阿曽原小屋では電話の音が鳴り響きますので、問い合わせ・ご予約の電話は午後八時ぐらいまでには済ませる様にお願いいたします。(緊急時の連絡用に、夜間に切って置く事も出来ませんので)

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