遭難対策無線(5Wの小屋用)
仙人池ヒュッテ・池の平小屋とは、登山者の動きが有る場合は、毎朝電話で人数・年齢層・通過か宿泊か等を連絡し合っています。(昔は、遭難対策無線を使っていたのですが、現在は通話料金の高い衛星電話を使っています)
登山者の少ない山域だからこそ出来る対応ですが、それぞれのパーティの昨日のペースなどを教えてもらえると小屋への到着時間が読めて、要らぬ心配をしなくて済み大変助かります。(他にも到着パーティからも情報をもらっています)
無線で連絡し合っているのは、黒部源流山域(太郎平・水晶等)の小屋でも毎朝しておられます。
或る時の、仙人池ヒュッテの先代「カーちゃん」の無線連絡!
「イズミさーん、今日三人そちらに向かうお客さんが、今晩カレーを食べたいって言っておられまーす」
あらあら、仙人池ヒュッテの無線は富山の警察本部まで飛ぶのに・・・。
たまに冷や汗をかく通話も有りましたが、ある夏の日
「阿曽原さーん、毎年来る北海道の鈴を転がした様な元気な女の子が一人行きまーす」
と連絡がありました。
夕飯の準備に掛かる頃になっても、「鈴転がし女子?」が届かないので心配になり、大仏が様子を見に行ってくれることに。
仙人温泉に沈没したなら連絡が有るはずですが、確かめようにも仙人温泉さんは普段は無線も電話も開局していないので確かめようも有りません。
当時は旧道を使っていたので、仙人温泉下部の雪渓の残る枝沢の状態が悪くなると非常に危険になります。
心配で走って行ったのでしょう、30分余りで大仏から連絡が入りました。
「鈴の女性は問題の沢で落石に当って気を失っていたらしく、今しがた気が付いたみたいです。自力歩行出来そうなので、これからサポートして阿曽原に向います」
とのことでした。
幸い怪我は大したことはなかったのですが、怖い思いをしたからでしょうか、翌年から「鈴女子」は来なくなってしまいました。
「雲切新道に切り替えないと」と強く思った事故でしたが、普段からの連絡が有ったからこその、早期発見・救助となりました。
そういったこともあって、小屋に届いたお客さんに「後ろにあと何人ぐらい歩いていた?」と良く聞きます。
実は、お客さんの情報も安全登山のネットワークの一助になっておりますので、協力のほどお願いいたします。
※追伸!
昨日、阿曽原から池の平へ向かった飛び込み男性は、池の平小屋の支配人・連絡を受けた警備隊の指導も聞かず、北方稜線から剱岳に向かったようです。
無計画で行き当たりばったりな行動には呆れます。
今朝方、立山・剣方面には雪が降ったとのこと、彼はどれだけの装備を持っていたのだろうか?心配です。
冬期間のアルペンルートを開放すれば、このような登山者が出て来るのは目に見えています。
登山届の提出を義務化しても、現場で計画変更されては防ぎようが有りません。
もしこの様な登山者が事故に遭ったりすれば、救助に行く警備隊員も口には出さないでしょうが遣り切れない思いになるでしょう。
県の観光推進計画を、このまま進めていいのでしょうか? 強く・強く疑問に思います!