阿曽原温泉小屋

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こんなところで!Ⅳ

2020-02-13

写真

二代目「とやま」の訓練

続き。

徐々に現れてくるジャケットやパンツの向きから頭部を割り出して、ダメとは思いつつも声を掛けながらシャベルを振るい頭の辺りはグローブで雪を掻き出します。

横向きに埋まっていた女性の蒼白の顔面を出してあげますが、グローブを介して顔面の硬直具合が手に伝わって来て・・・埋まりながら呼吸をしようとしていたのか?口元を少し開いて目を強くつむり少し苦しそうな表情に見えます。

頭を引き起こしますが呼吸・心拍共になく、持ち上げた頭部は妙に重くて・・・グローブを外して素手で頬を触り瞼を開けてみますが瞳孔は開いており、ただただ無慈悲に冷たさが手に伝わって来るばかりです。

被った目出帽の縁から、濡れた髪の毛がはみ出して額から頬にかけて張り付いていて・・・それがなんとも可哀想というか無力感に沈みそうになりますがモタモタしている暇はありません、ヘリコプターが飛べる天候の間に帰らないとエライことになります。

テキパキと本部に無線連絡しつつ遺体収納袋に遭難者に納めてロープで締め上げます。 締め上げる!って可哀そうですが、少し我慢してもらわないとワイヤーで吊りながら一時的に移動するので、収納袋自体の強度が心配なのでロープで荷重が分散される様にする必要があるし、収納袋の中で遭難者が偏ったり袋が緩むと危険なのです。

日没に向けて、薄暗くなるし気温は下がるし少し不安になりましたが・・・ヘリコプターが飛んで来てくれて、数回に分けて遭難者と我々をピックアップしてくれて一件落着したのでした。

続く。

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