こんなところで!Ⅱ
2020-02-10
続き。
全員アイゼンを装着して、クラストした斜面を現場に向かって下り始めます。少し歩きだすと、元通りの少し靴が潜る程度の雪に変わって、デブリの近くまで行くとアイゼンが邪魔になるくらいの柔らかさに変化してゆきました。
現場に近づくと、デブリの末端辺りに黒いヤッケのパンツと登山靴が見えています。向かいながらコールしても反応もなく、着いて直ぐにシャベル等で掘り出すものの遭難者は既に硬直が始まっています。
ガンガン掘り進めたいところですが遭難者に傷を付けない様な慎重さも大切、やっと顔面が出てきましたが中年の女性は呼吸の確認をするまでもなく、顔面蒼白・唇は蒼く・頬は冷たく硬く・瞼を固く閉じて・・・せめてもの救いは、顔面に傷もなく穏やかな表情だったことでした。
曇天で寒風に小雪が吹き付ける現場、重たい雰囲気の中で聞こえるのは風の音と我々の作業音だけ。
通報者は、埋まっている仲間が見えているのに現場を離れて通報に向かったの???
一緒に流されて生き残った通報者は、同じく中年女性だったので一人では無理だったのだろうか??? それはそれで、辛かっただろうな~って。
可哀そうというか・・・「何とかならなかったのか?」って遣り切れない気持ちも湧いてきますが、未だ寒くて寂しい思いをして雪の中で待っている遭難者を早く出してあげないと。
雪崩のデブリは、幅10m足らず・長さ25m余り・厚さもそれほどでもなさそうで雪崩の規模とすれば小さなものでした。
発生源は、剣山荘の裏の剣沢側の緩斜面で「這い松」が生い茂っている隣の斜面からです。
「エーッ、急斜面は他にいくらでもあるのに、あんな場所から出るなんて?」
出動メンバーは4人だったか?隊員一名は次の雪崩に備えて上部の見張りに残して、残りは横一列になってゾンデ棒で雪崩デブリを突きながら探します。
もう一回続く。
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