普通に歩いて頂ければ、事故は無いのだけれども・・・。
2018-09-05
今回の台風は、前回より若干風が強く吹きましたが、テレビが受信出来ていたと言う事は雨もさほど強くはなかったのでは?お陰様で小屋への直接の被害は有りませんでした。
(雨雲レーダーを見ていたら、見事に後立山連峰が壁になっていた様な・・・、稜線は大変だったのでは?)
先に台風通過時に、80m転落して助かった話を書きました。今回はその反対の話しです。(気分が悪くなる方が有るかも知れませんが、救助現場の現実です。ご容赦を!)
ある快晴の朝、朝食を済ませて10人位のグループが欅平に向けて出発しました。
直ぐに、キャンプ場の阿曽原谷の入り口で大声を出している女性が???その仕草からは、えらく慌てた様子が見て取れました。 「なんか有ったかな?」大仏と長靴を履いて急いで行ってみると、「グループの一人が、本谷の橋の手前の道から阿曽原谷に転落した」とのこと。
落ちるような場所???大した高さは無いはずだけど?と思いつつ、すぐ先の本谷まで進むとリーダーの男性が道からザイルを使って川底に崖を降りようとしていました。直下6~7mの川底には、顔を水につけた状態で遭難者が見えます。 咄嗟にリーダーに「このまま降りては遭難者に落石を落とすから止めて!」と伝えて、我々は対岸(左岸)の斜面から藪を伝って下りました。
遭難者は60代の女性、流れの中に顔面が半分ぐらい浸かっていました。直ぐに引き上げて、顔を見たところ瞳孔が既に開いており、呼び掛けにも反応なく脈も呼吸もなく危機的な状態でした。
大仏と二人で、その場で蘇生術を施します。私がマウストゥマウスで、沢水で冷えて冷たくなっている口に直接息を吹き込み、大仏が心臓マッサージを交互に施しますが蘇生しません。
20分位したところで先のリーダーが降りて来てくれたので、心臓マッサージは出来るか聴くと「出来る」とのことなので大仏と代ってもらい、大仏には小屋に帰って警察・消防に状況を連絡してヘリコプターの手配等を頼む事に。
リーダーに心臓マッサージをお願いした途端、遭難者の口から朝食の御飯・味噌汁・オカズが吐しゃ物となって噴き出して来て・・・。 遭難者が女性だったので遠慮されたのか、心臓を押えずに「ミゾオチ」を押してしまったのです。
当時は今の様に、口と口が直接触れない逆流止め弁付の用具も無く・・・。そのまま息を吹き込むことなど出来ないし、止めようかとも考えたのですが、40分後に蘇生した事例も有るし、見上げると同行グループの仲間達が拝んでこちらを見ているし・・・。
意を決して、遭難者の顔を横にして口から吐しゃ物を掻き出して、私が来ていたポロシャッを脱いで口に当てて蘇生を続けたのですが、息を吹き返すことは有りませんでした。
※教訓!(あたりまえの事ばかりです)
●.怖くない所でも気を抜かずに、丸太に気を付けて山側の手摺番線に手を添えて。(ほとんどの事故は、なんでここで落ちたの?と思ってしまう場所です)
●.見渡せば簡単にアプローチできるルートが有ったし、遭難者の真上から降りるようなことは× まず落ち着いて
●.今目の前の最優先課題は何か?訓練で習った事を、現場に合わせた柔軟な対応で(経験が無いと、舞い上がってしまうからこそ落ち着いて)
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