ビバーク「熊の岩」Ⅱ 長~い夜!
2019-06-29
続き!
みんなそれぞれ、その場から逃げ出そうと入り口に殺到する者・手刀でテント生地を突き破ろうとブッチャーの必殺技「地獄突き」を仕掛ける先輩も!(アブドーラ・ザ・ブッチャー、若い人は知らないかな?)
ボファーーッ! 発火の瞬間に身を翻した途端に、爆発というほどの大袈裟なものではありませんが爆風と炎に押される形でテントの外に。
立ち上がつて振り返ると、フライシートは雨で濡れていてほとんど無事だったのですがテント本体は燃えてキレイに無くなり、ポールだけがそのままの形で曲がったまま立ってフライを支えているのでした。
まだ、所々に火が残ってフライに穴を空けていたので慌てて引きはがすと、哀れポールは所々燃えながら漆黒の闇の中にパタパタと倒れて・・・。
一番年長の隊員が「この野郎」って、未だ炎を噴き出して転がっているコンロを蹴飛ばしています。
私はそのテントの残骸と先輩の仕草が可笑しくて・可笑しくて、深刻な状況を忘れて思わず笑いこけてしまいました。(かなり酔いが回っていたような)
ずぶ濡れで寒さで我に返ると、雷雨は増々強くなって「ピカ・ドン」状態でその度に地響きを立てています。頂上のお宮さんの屋根に落雷で空いた穴を思い出して鳥肌が・・・。
長次郎雪渓を下ろうにも、9月末の急な雪渓は氷化している部分があまりにも多く視界の利かない真っ暗闇に加え目も明けていられないような強い雨だし、雪渓を歩く事を想定していないためアイゼンを持参して居る者も二人だけ!
このまま下降するには危険過ぎるし、頂上周りで還るにも稜線に出る前に落雷の餌食になるのは目に見えています。
仕方なく、現場で朝まで頑張る事にして残ったグランドシートの上にみんなで雨具を着て横たわって、焼けて穴だらけのフライをみんなで被ってジッと明るくなるのを待ちます。
標高も高く寒冷前線の通過で気温がドンドン下がり、周りには冷たい雪渓が広がり、全身ずぶ濡れで、フライシートは穴だらけで猛烈な降りには役に立たず、岩場の平地は浸水して来るし岩は冷たいし、なにより落雷の度に地響きがして生きた心地がしません。笑いこけていた元気は消え失せ酔いも醒めて・・・猛烈な雷雨に翻弄されながら奥歯をガチガチさせて長~い夜の過ぎるのをひたすら待つたのでした。
「人間は無力なんだ」これまで何度も思い知らされてきているはずなのですが・・・。
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