黒部の歩き方!
2019-06-30
雨の日の午後、登山者から「折尾谷 の阿曽原側で人が落ちた」との通報が入りました。
当日は警備隊員が不在で、大仏と二人で現場に走ります。現場は水平歩道の涸れ沢に架かる5mほどの丸太桟道ですが、急な涸れ沢を見下ろしても藪が濃く姿は見えずコールしても返事も有りません。
見通しのきかない斜面を、直接下降して落石を誘発させて遭難者に当てようものなら何のための救助か分かりません。少し離れた大きな沢を下って、遭難者の転落した沢との合流点からアプローチします。
合流点から、涸れ沢を登り返した所で遭難者を発見。 呼吸も脈も無く瞳孔も広がって、頭部は骨折して柔らかい部分も、顔面は打撲で内出血しているところを見れば暫くの間は生きておられたのでしょう。
冷たい雨に打たれて冷え始めた顔を支えて、ダメ元で蘇生処置を施します。
大仏が血にまみれながら、遭難者の肺に空気を吹き込みます。「ゴーッ!ブルブルーッ!」空気が蘇生処置で肺から押し出され気管を通る時に響く音がするばかりで、自立呼吸する気配は有りません・・・。
話しは逸れますが他の現場で、この音を聞いて「まだ生きてます!」って遭難者の同行者に泣きながら訴えられた現場が有りました。蘇生処置を止める旨を告げたことが・・・辛い思い出です。
グズグズしていては、日没まであっという間です。次の一手も考えねばなりません。
足場の悪い急な沢(小さな滝の連続)を遭難者を背負って登り返すには、大仏と二人だけでは無理です。警備隊も宇奈月から向かっているものの、現着するには日没をかなり過ぎてからでないと見込めません。
雨は相変わらず降っており、水平道の辺りから上部はガスが立ち込めていますが、雨粒で若干視界不良ではあるもののヘリコプターが飛べない強雨では有りませんが、時折ガスは我々の直ぐ真上まで流されている不安定な状態です。(水平道から高度差で60m下部が現場なので、ヘリから見るとガスの下ギリギリのはず)
ちなみに、黒部川沿いは川風が吹き抜けるからか割とクリアなのですが、送電線が横断していたりして低い高度は視界がしっかり確保されていないと危険なのです。
続く。
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