阿曽原温泉小屋

k

台風通過中!

2018-08-24

写真

三号室の窓の外の立木はなびいて。

24日9時現在、強めの南風が吹いていますが雨も降らずに、このまま通過して行ってくれそうです。

朝暗いうちから、玄関屋根の波トタンを補強したり、風呂桶を片付けたりしていました。このコースの台風ならば、通過後の寄り戻しの風も心配ないかな~と・・・。(小屋の立っている場所は、南風には強い立地ですが寄り戻しの北風には弱いのです)

気温の高い風が吹き抜けると、融雪のペースが上がります。下の廊下・仙人谷ともに、状態が激変しているのではないかと予想されます。

※台風ネタ

古い話しですが、17・8年位前の10月中旬の週末の午後遅くに台風直撃の予報が。 予約だけで80人オーバーの大忙しの日でしたが、当然全員キャンセルと思っていたら、早く着く自信があったのか、黒部ダムから1パーティだけ入って来て。 よりにもよって、その内1名が半月沢上流15分の地点で転落したとの連絡がはいりました。

小屋の男性スタッフに全員出動してもらい、転落現場に到着したのが午後5時頃で薄暗くなっており、台風の中心が近づいて風は増々強く成って山中の樹木を揺らし枝葉を斜面に打ち付け出していました。

発生時に、現場を確認してきたリーダーによれば、転落者は生存しており付き添いに一人付いているとの事。 

頭を過ぎったのが昭和57年8月、台風直撃時に黒部下の廊下の鳴沢出合の岩屋でビバークしていた7名パーティが、増水した黒部川に飲み込まれて行方不明になり、4名は黒部川河口近くで発見され他3名は日本海まで流されたのか未だ行方不明の遭難事故でした。

「大雨が降って、増水すれば遭難者も付添者も流されかねない」、時間との勝負と腹を決めて、暗く強風の中を現場までザイルで下降してゆきました。(私より技術・体力が優れた若い衆はいたけれど、スタッフに危険な作業をさせる訳にはゆきませんでした)

峡谷内では、アッチコッチで「バーン!」「ドーン!」と強風にあおられた斜面から発生する落石の音と突風が、身体を揺らして・・・。 「バサッ!」直ぐ頭上で音がした途端に、ヘルメットをかすめて落石が2つ位落下してゆきました。奥歯を噛み締めて恐怖をこらえながら、丁度ザイル2本分の80メートルで川底に到着。 川底はU字型の形状で岩盤がツルツルに磨かれ、流れに向かって緩い傾斜になっており、意識の無い遭難者が横たわって痛みで動く度に傾斜で流れに近付くのを、付添者の20代半ばの小柄な女性が引き留めているところでした。(後の阿曽原スタッフ、「ナニワのおかん!」です。現場に降りれたけど、登り返す技術・腕力が無い事が判明して、付添にサポート隊員を付ける羽目に・・・)

一緒に平らな所まで遭難者を引きずって、直ぐに引き上げようにも80メートル上まで引き上げるには人員が足らず、立山室堂から救助に向かっている山岳警備隊の到着を、真っ暗で激流の音が不気味な川床で増水に怯えながら待ちました。

待つこと数時間、山岳警備隊が到着して引き上げに掛かり、藪に身体が引っかかり動けなくなり大仏に助けてもらったり・肋骨が折れて肺に刺さっていたらしく背負われて胸が私の背中に当ると、無意識に離そうと私のヘッドライト付のヘルメットを押して視界が無くなったりと・・・増々強くなる風の中を苦労しながら途中まで来たところで、急に風が弱まって???星空まで見え出しました。(助かった!って確信しました)

日電歩道に出てからも、背負われながら無意識に痛みで暴れる遭難者にフラ付き道から落ちそうになりながら仙人谷ダムまで搬送して1件落着と思いきや、深夜1時頃小屋に帰ると台風の寄り戻しの風で屋根が浮き上がり、小屋の中は砂と枯葉でザラザラでした。(まだまだエピソードを書き切れませんせんが、続きは暇な時の小屋に来て頂ければお話しします) 

運の強い人は、80メートル転落しても!台風直撃中でも台風の目に入ったり! 助かる人は助かるんだな~って・・・、でも、そもそも転落しないように歩いて下さいませ。

台風直撃中の救助活動は、助ける方にしてみれば命が幾つ有っても足りませんので!

アーカイブ

最近の記事