阿曽原温泉小屋

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正しい雪洞生活?Ⅹ(嘘やろ)

2021-03-21

写真

「小窓ノ王」池ノ谷側岩壁は険しくそびえて。

翌朝は小雪が舞っているもの、薄いガスで視界も数百メートルあり雪面も案外締まってラッセルの苦労させられる事も無かった記憶が・・・小窓尾根隊は「小窓ノ頭」(2,650m)でビバークしていたらしく「小窓ノ王」基部から先はルート工作が省けて「三の窓」で合流できるはず。

早月尾根隊も、剱岳頂上まで向かっている連絡が入る。順調に行けば、今日中に剱岳頂上で三隊が合流して、上手く行けば早月尾根にトレースが付いているのだから安全地帯の2600mか2400mまで下山することが出来るだろう。

「小窓ノコル」から「小窓ノ頭」に慎重に登ると、稜線上には小窓尾根隊のトレースが「小窓ノ王」に向けて続いています。

「小窓の王」基部 から「三ノ窓」までは、写真で見る通り「池ノ谷左俣」から立ち上がる大岩壁(地形図を参照してもらえば、等高線が書けない岩壁って)

高度感のある岩壁の中、雪が積もった狭い外傾バンドをザイルで確保しながらの下りトラバースになり緊張させられるし慎重になり時間も掛かります。

私はルート始点の岩場で、雪に腰掛けながら前進する隊員を次々とザイルで確保していました。

ガスが濃くなって来て視界が効かず、ザイルの動きで先行する隊員の動きを想像しながら寒さを堪えていた時です、いきなり慌てた声で無線がガサガサと騒ぎだします???

「カニのハサミ」で、鍛冶分隊長が雪崩に巻き込まれて池ノ谷に流されたとの早月尾根隊と馬場島の訓練本部との信じられない交信内容でした。

「嘘やろ!」視界が効かず吹き付ける風の音しかしない酷寒の岩壁で、ラストで確保していた私は近くに話し掛ける人間もおらず、身体の力が抜け宙に浮いた感じで動けなくなった記憶があります。

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