阿曽原温泉小屋

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そろそろ、始まるのですが・・・。

2019-03-31

写真

新品のメインロープとスリング用の細引き!

作業用の新品のロープが届きました。ロープの損傷・摩耗・硬直の程度を見て補充しています。

白いメインロープが、10.5ミリ径 200Mが二巻き・スリング用の細引きも適量!

メインロープは、クライミング用とは違い伸びないケービング用の物を使います。 我々の作業は、基本的には降る仕事なのでクライミング用の様に墜落時の衝撃吸収の心配はいりません。(岩や倒木を、縛って固定するにも、引っ張って置くにも都合が良いのです)

50Mに揃えて切断して1人一本ずつ使う事に成りますが、東鐘釣山では壁が大きすぎて1人二本100M分を持って行くことも有ります。土木工事用のロープは、太く・重く・曲り辛く・対応する器材も重く嵩張る等々、嶮しく高度差の有る現場に使うのは現実的では有りません。

四月初めから仕事に行きたいのですが、雪が降る予報で・・・。

斜面に雪が付いている間は、浮石等が見えないので仕事にはならないのでしばらく待たされそうです。

よーく、観察してみると・・・!Ⅱ(作業着手前の風景!)

2019-03-30

写真

川を横断する、空色のラインのトロッコの鉄橋まで300Mオーバー下降します。

続き!

そのメンバーがロープで懸垂下降していて、二坪ほどのテラスに降り立った途端に足元のテラスが丸ごと崩れ落ちてしまったとのことでした。

降り立った直後で、上部の支点からロープとシャントで確保をしたままだったので転落せずに済んだのです。

それにしても、あのテラスは雑木が生えてシッカリしている様に見えて、中継ポイントや休憩場所として利用していたのですが・・・。

メンバー全員、鼻の穴・顔面・衣服等全身土埃にまみれてしまいましたが、全員元気で何よりでした。(上昇気流は、普段は目に見えないけど岩壁では結構な流れが有ると!)

前のページの写真を観察してもらえると、手前の岩壁は雑木が無い・顕著な凹凸も無く一枚岩の様に見えます。

赤色の服の人間が居る辺りは、雑木が生い茂り・岩が赤茶けてクラックが入っているのが分かります。

東鐘釣山は、黒部川流域では珍しく石灰岩が隆起して出来た山なのですが、均一な出来方をしていないので「混ざりもの」みたいな成分を含んでいる場所は、酸化して赤錆の様に脆くなっているところがあります。

(同じ様に、剱岳の西面にあたる富山平野側は赤茶けて見える場所が目立ちます。まさしくガラガラで落石多発地帯です)

クラックが有れば植生も生い茂り出すことも、クラックの無い綺麗な岩壁では逆に草も生える事が出来ません。

更には、赤錆で膨らんで弛んでしまった岩は脆くなっているのは当たり前の事です。

自分の身を守るには「山を見て考える」事が大切で、いろいろな情報を集めて考えて、総合的に判断することが肝かと。(場所によっては樹木が有る事で安定している事も・・・その場その場で判断!)

これは一般登山道を利用する時にも(普通に生活するにも)大切になって来ることです。 今までも、いくつか書いて来ましたが、周りに気を配る事が大切になって来ると考えます。

このページの写真は、南壁の上縁から見下ろしたものです。

黒部川の水がキレイですが、急流なので泡立っているから白っぽく見えます。 鉄橋の岩壁側が茶色に見えるのは、橋をガードする為に材木等で覆って有ったのですが「牛の首」は遥かに飛んで橋の中間より向こうまで跳ねました。

岩壁の岩が白くなっているのは、落石が落下した時にぶつかって表面が削れて出来るものだし、木が裂けているのは落石?雪崩?等々が分かります。

一つの写真を見るだけで、いろんな情報が入って来るでしょ!イロイロやっていると、いろんなことが覚えられますよ!(それを、怖いと思うか?面白いと思うか?金になると思うか?世の中の役に立っているって思うか?誰かやってくれると思うか???)

平成14年秋の大崩落後に、初めて調査に入った時にはさすがに緊張しました。この壁でもヒヤヒヤ・ウヒャウヒャ話しが沢山有りますが・・・機会が有れば書いてみます。

よーく、観察してみると・・・!(色の違い・樹木の有無)

2019-03-29

写真

東鐘釣山東南壁上部!(この下約220Mに、トロッコの鉄橋があります)

この現場は3ページ前の写真の左上部の藪の生え際になり、黒部川床から240M位?の高度になります。

左奥の雪の付いた山は黒部川対岸になり、高度感が分かるかと!中央に赤色の服を来た人間と、その上に大きめの針葉樹とベージュのヘルメットの人間が見えます。

岩壁内の不安定な浮石・倒木等の点検作業中なのですが、鉄橋の幅の何倍も広い範囲を調査しなければなりません。転落したモノが、岩角で跳ねて何処に落下するか分からないからです。

実際、大仏が撮影場所手前辺りで「牛の頭」位の浮石を処理したところ岩角で跳ねて・・・二呼吸したくらいで「グゥガ~ン~~ン」はるか下方から山々に響き渡る衝撃音が。すんなり落下してくれれば橋の下流に行くはずだったのに、跳ねた際に方向が変わって鉄橋に直撃して・・・小さく砕けた石は鉄橋の対岸直前まで70M以上は飛んでいました。(鉄橋対岸の見張り員が「ひゃーつ」と言いながらトンネルに逃げ込んでいるのが見えて、奇跡的な確率というか、神様の御導きというか)

実は、「牛の頭」どころでは無い事態が・・・!

写真撮影日とは別の日に、同じ辺りを横一列に広がって点検に入りました。

突然「グゥワワワ~~~」地響きと共に写真中央付近で崩落が発生して、上昇気流で湧きあがった土煙で一時の間辺りは何も見えなくなりました。

近くで下降中だったメンバーが「○○ーッ」ってメンバーの名前を必死に呼んでいるのが聞こえますが返事が有りません。

「やられたか・・・」治まらない土煙の中で目も開けられず、岩壁にぶら下っていたら「オーイ」と返事が聞こえて一安心したのでした。(猛烈な土煙で、目も口も開けれなかったみたいです)

続く。

危機一髪!

2019-03-28

写真

編ロープが花が咲いたように?(ロープがシャントの角で曲がっています)

身体はシャントでロープから固定はしてあるものの、スリングで薮に仮固定もしてあるので斜面全体の重みに引かれては止まるモノではありません。

本人は、崩れ落ちてゆく足元の斜面の上を必死に速足で駆け上ろうとするのですが・・・同じ場所で足が空回りしている様な状態です。(後から笑い話になっていましたが、アメリカンアニメみたいな空回りしてました)

ロープを挟んだままシャントが滑り出して・・・、末端の結び目まで滑ったところで止まってしまいました。

ロープは上の支点に固定され、末端はスリングを介して斜面に引っ張られテンションMAXでパンパンなのが一目で分かります。

その時、シャントの上縁の「金属の角」に当って少しロープが曲る場所で、編みロ―プの外側の繊維からプツプツ・クルクルと切れながら解けだしたのです。(ひもを切る時に、ピンと張っているものに刃物をチョット当てるだけで簡単に切れるでしょ)

4~5M離れて、作業を見ていた私達には何の手助けをする事も出来ず「ア~ッ!」と声を出しながら・・・、正直言うと「こりゃ、助からんかも」って覚悟をしたのでした。

その時、藪に仮固定していたスリングが身体より薮が低い位置になった事によってズルッと解放したのです。まさしく間一髪のタイミングでした。

ずり下がった斜面は、周りの斜面を巻き込みながら一気に急斜面を大量の土埃と地響きを残して崩落して行ったのでした。

当の本人は、安全地帯まで逃れて来た所で放心状態です。 解けて引き千切られ出したロープは、中心の細い芯が2本残るだけで大部分は花が咲いたように切れて開いています。

ロープに装着したシャントを外そうとしても、カチカチに締まって外れず。同じくロープも末端の結び目を解こうとしましたが、締まって石塊の様にになっていました。

もう一瞬スリングが開放するのが遅かったら・・・、彼は間違いなく崩落に巻き込まれて居たことでしょう。その規模と高度差からすれば、怪我で終わるとはとても思えませんでした。

かんたんそうな斜面・馴れ・便利な道具が有って緊張感が掛けていたのか?(後から、現場を観察したら崩落の理由も推察できました)

事故が発生してからでは遅い! 心に刻んで「想定外」と言い訳しない様にとの教訓になっています。

偉そうな事言ってますが・・ギリギリ事案も!

2019-03-27

写真

ロープを挟んで固定する器具(シャント)

危機一髪な話を一つ。

写真のシャントでロープを挟み込んで、奥に見えるゴールドメッキのカラビナを経て身体に装着したハーネスに接続して使います。(見えていませんが、シャントの上部に8環を装着してあります)

体重を掛けると、シャントがロープを挟み込んで固定されて身体がそれ以上落ちなくなり、両手がフリーになって作業をすることが出来ます。

とある現場で1人のメンバーが、岩壁面と岩壁面に挟まれた石に「大バール」(鉄の棒)を差し込んで落そうとしました。

彼は当然、作業現場の6M位上部のしっかりした立木からロープを下げて目標の石の近くでシャントで体を固定しましたが、急斜面の灌木帯で、踏ん張り辛いので自分のハーネスから近くの藪とスリングを引き寄せる様に身体を固定してから作業に当りました。

石に「大バール」を突き立てた途端に、割と安定している様に見えた斜面全体が「ズズズーッ」と振動し始めて・・・ずり下がりだしたのでした。

本人がロープの支点を取っている立木は、その場で立ったままなので普通に考えれば足元が無くなってもロープに固定されている場所からは落ちないのですが・・・彼は、もう一か所ブレ止めにスリングで近くの藪斜面から身体を固定していたため、その斜面のずり下がりに引っ張られ始めてしまったのです。

ヒッヒェ~ッ! 続く!

いま、我々が黒部で出来る事!

2019-03-27

写真

東鐘釣山南壁! 高度差は300M以上、調査にザイルで下っています。

私達が、黒部峡谷で作業に当るようになってから岩壁での調査・浮石除去等の作業ではクライミング用の装備・道具を使用する様になりました。

我々が当るまでは、法面工事の業者さん達等が土木作業用のロープ・器材を使っていたのですが、黒部峡谷沿線は深く険しい場所ばかりなので対応できない所が沢山出てきました。

それまでの資機材は、やたら太く・重くて融通が利かず危険な場所での機動力は皆無!そもそも、大岩壁を上から下まで作業するにはヘリコプターで大量に現場まで運ばないと・・・費用面・器材回収等で現実的では有りません。

実際に写真の現場では、線路から100M位の高さまで鋼製単管で足場を組んで作業に当ったのですが、出来た当時はぶら下らずに作業が出来て安心でしたが、それ以上上での作業は相変わらずでした。冬場には、雪崩でアッサリ壊されて・・・春に河原に散乱した足場単管の回収に大変な目に遭いました。(現場の責任者には「作るのを止めれば~!」って進言したのですが・・・)

我々は、ほとんどが民間の山岳救助隊員ですし「国立登山研修所」の講師を務めていた者も居ました。

山岳救助活動をしてきた経験とノウハウを黒部峡谷で生かして作業をして来ました。

ギリギリ!超ラッキー!等もも有りましたが、お陰様で作業中には1人も怪我人を出してはいません。怖さを知っているから慎重になり、危険地帯からは早めに離脱する機動力を発揮して、危険を察知した時には遠慮なく声を掛けあって等々に努めて来たからかと思います。

しかし現場ででは、思いもしない事・経験したことが無い事にも遭遇して来ました。その時に効いてくるのが、基本が出来ているか?基本と経験を応用してその場を乗り切る冷静でいられるか?に掛かって来るのではないかと。

思い返してみれば・・・訓練では立派な行動が出来るのに、実践では???って人間いませんか?

(想定外!って文言は、後から検証したら予見できる事が有るから「言い訳」に聞こえるのは私だけ?)

体力的な余裕・道具を使いこなす等の基本能力と、経験値・想像力・応用力が現場では役に立ってくるのではないかと考えます。

(たまたま、事故を起こしていないから偉そうに言っていますが・・・明日は我が身かもしれませんので)

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